第十七話
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ったのか、大雑把な言葉になった。
気分が高揚しているのが客観的にわかる。
「両者、準備はいいですか?」
会場は静まり返る。
そこには一つの呼吸もなく、言葉もない。
空気が移動する音が、耳のすぐ近くを通り過ぎる。
「ファイッ!!」
実況が叫んだ。
すぐさま、奴から距離を取り、懐からSIG SAUER P228 XXダブルクロスを取り出した。
両手の人差し指にトリガーをかけ、銃身の移動により、一回転をして両手に収まる。
いつものように距離を取り、奴の出方をうか……
しかし奴は、瞬く間に距離を詰めていた。
「手始めに体ごと吹き飛んで死ねぇ!! 無能野郎ぁ!!」
早い、奴は俺の顔面へと、右手の豪拳が迫ってくる。
反応には自信があった、しかし奴の攻撃はそれを凌駕してるほどに早かったのだ。
視界ギリギリにその手を捉えていたため、反応は遅れたが、首を横にずらし避けきることができた。
後ろにはコンクリートの障害物が近くにあり、当たらなかったパンチが、障害物を砕いた。
後頭部からは衝突による爆風が襲う。
小石の弾が後ろからあたりながらも、奴の腕をかいくぐりながら、体操選手のように体全体を使ったジャンプ回転で距離を取り、着地と同時に奴の体をめがけて射撃。
ダッ!!
金属と何かが衝突したのか鈍い音が鳴る。
奴の胸の前で受け取るように握りしめた腕からは、煙が立ち込めていた。
「狙いはいい…… だが残念だなあ!!」
そういうと彼は、何かを潰したように粉々にした。
砂鉄が、彼の手のひらからぼろぼろと落ちていく。
弾を潰している、その剛力、玉をキャッチするほどの反応速度に驚愕する。
化け物だ――握力、移動速度、障害物を破壊するほどの筋力、あれは超筋力系統の能力者か?……
怪力からはスーパーマンが連想させる。
それほどまでに、いとも簡単に物を壊す姿は常軌を逸している。
奴は悠々と、飄々と、とてつもない力を持て余しているかのようにその力を行使する。
どう考えても接近戦は圧倒的に不利、しかし距離を取るにも、あの移動速度の前では不毛だ。
「お前には、わりいけどよ…… 最初から全力でいかせてもらうぜぇ」
彼は顔の前で、左の手のひらに向けて右手をパンチしている。
バチンと殴っているその行動に、力強さを感じさせる。
俺の口から笑みが溢れ出る。
――ならば。
――――覚醒せし感覚《Awake Sinn》――――――。
覚醒した視界が、映像の速度情報をスローモーションへと移行させる。
思考と反応の境を限りのないゼロへとオーバードライブ。
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