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最弱能力者の英雄譚 〜二丁拳銃使いのFランカー〜
第十六話
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悪い顔を自分でも眺めてみたい。

「っもぉおー! 今度からはノックしてよね」

 ドアに寄りかかっていると、中から彼女の声と、布と布とがこすれる音が聞こえる。
 あまり時間はかからずに、風呂場のドアが開いた。

「悪い」

 と言って、彼女がドアを開けたタイミングと同時に、許しを請うために手を合わせた。

「この前はおっぱい触ってきたし…… うーん、タスクのエッチ!」

 腕を組み、口をふうせんのように大きくすると俺のあたまをやさしくチョップした。

「以後気を付けます……」

 トホホ…… と口から出そうになりながら、自身の頭を撫で彼女に言った。



 さっと体を流すと、ユウが作ったカツどんを食べた。
 この前、俺に作ったカツ丼よりも味付けがかなり美味しいものとなっていた。
 特に、調味料とカツの絶妙なバランスが、以前よりも上手くなっていた丼ぶりだ。

「ユウお前すげえ料理うまくなってんじゃん」

 ガッーと口にかき込みながら、彼女に言う。
 3人は丸いテーブルを囲むように座り、お互いにカツ丼を頬張っていた。

「確かに、お店に出せるくらい美味しいよ」

 同じく口に押し込んでいるマイも大絶賛のようだ。

「えへへ…… ありがとうです」

 笑顔になるとユウもまたかき込んだ。

「そういえばたすく兄さん、今日のランク祭敗者復活戦、頑張れます?」

 食べていた手を止めると、質問をしてきた。

「おう、美味しいカツ丼食べたし絶対にカツよ!」

 親指を立てて、右目でウインクをした。

「カツどん冷えちゃいますから、そんな寒いこと言わないでくださいよ」

ユウがそんなことを言い、3人は笑い合った。



 俺は、一人ランク祭が行われる会場に向かっていた。
 空は見渡す限りの快晴で、満天な青空が広がっている。
 どうしてもランク祭を勝ち上がらないといけない理由が俺にはある。
 それは、憧れのあの人に少しでも近づきたいからだ。
 あの人のことをできる限り思い返してみようと思う。

 俺は唯一のロストシティの生き残りである。
 生き残りというよりも、この不死身の能力のおかげで、あの”地獄”から生還できたのだと今になってわかった。
 俺は生きたままあの”地獄”を味わっていた。
 それを救ってくれたのがあの人だった。
 抱きかかえられた腕が、その背中が、僕の幼き頃のお父さんのように大きかった。
 俺はその人のように、誰かを助けるような人になりたいと思った。
 そのために誰よりも強くあるべきだとも知った。
 だから俺は、剣先生によって与えられたこのチャンスを無駄にすることはできない。
 自分にも周りにも、俺の強さを証明しなければならない。
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