第十六話
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『部屋に誰もいなかったから寝っ転がりながら、着替えをしていた』と言ったらわかってくれた。
わかってくれた……
「そういえば冷蔵庫の前にある食材はどうしたんだ?」
1メートルの大きさの冷蔵庫前には、たくさんの食材が入ったレジ袋があった。
袋にあふれ出るようにして出ている不健康食品のカップラーメン、多種多様な菓子。
下の方には大根やらニンジンやらとが、透明な袋の中から見える。
「わかってるって思ったんだけど、タスクの退院祝いに私が何かごちそうさせようと思って」
にしてはお菓子が多いなと思ってしまった……
その量のインパクトがとても大きいのだ。
「お菓子はユウちゃんがなの! せっかく私が作るのにね!」
と言うとマイは口を縮め、ほっぺたを膨らました。
この二人の何でもないような時間がとても幸せに感じる。
それと同時に、彼女の前では等身大の俺でありたいと思った。
しばらく二人でテレビを見ているとユウが帰ってきた。
どうやら、何かしら言えない用があったらしく、何も言わずにテレビを見ている。
俺に何か言うのではないのかと思ったが、そんなことはなかった。
そのあと夏も終わりに近い気温なのに、3人で鍋をした。
マイは水炊きを作ってくれた。
ユウと具材の取り合い、その後に汗だくになりながらうどんを食べた。
今までとは変わらない日常、それが楽しく感じられた。
1日、2日で彼女らに合わなくなった俺は、あんなに寂しかった。
今はこんなひと時に安堵している自分におかしくて笑ってしまいそうだ。
そんな、なんでもないような日々が一週間ほど過ぎた。
3人でファミコンマンをプレイしたり、時に罵り合い、パシリにされたりと。
テレビドラマによくあるような、同性の友達が俺にはいない。
だけど、彼女らに相手にされている俺は恵まれていると思う。
そう思った。
[よう青年、自主練はさぼってはいないか? ランク祭敗者復活戦のトーナメントができた。明日に発表されるから楽しみにしておけよ]
寝る前に剣先生からメールが入った。
てきとうに剣先生に返信をした。
敗者復活に選ばれるのは、審査員の独断と偏見によって選ばれると剣先生が言っていた。
大体は、運悪く最強に近い者に負けてしまった、それなりに強い人物が出ることができるらしい。
Aランクは問答無用でトーナメントに組まれることになっている。
俺の場合は、盾田剣士が俺以外を快勝で勝ち上がっているため、出場可能とのことだった。
そんなことはどうでもよかった。
ただ、勝つだけだと自分に言い聞かせて目を瞑った。
ランク祭敗者復活戦当日。
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