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最弱能力者の英雄譚 〜二丁拳銃使いのFランカー〜
第十三話
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だよ。
 一方的に俺が最高に気持ちが良いわけだが。

「ああ、私の勉強不足だ。貴様のような無能力者が卍城を倒したことがいまだに信じれなくてな。卍城は最高の甘ったれ野郎だ。あいつの真の実力ならお前ごときにはおくれを取らないだろう。だが一時の気の迷い、判断ミスでお前のような石っころ一つに転んでしまった」

 奴は唾を吐き捨てるように呟いた。

「これでは、他の能力者に示しがつかないではない。そうは思わないか? 我々A級というものは戦争の前線で戦う、いわば国を背負う秘密裏のヒーローだ。そんな重圧の掛かった看板に糞を擦り付け、おいおい自分は病棟で声帯の治療ときた」

 声質からは憤怒を感じ取れる。奴の卍城に対しての好感度がそうとうなマイナスであり、彼が”負けた”ことに対してどれだけふがいない思いをしているのか分かった。
 俺には心底どうでもよかった。

「へへっ! そうかいそうかい。そういえばさすがに俺たち、戦闘を無視してしゃべりすぎじゃないの……」

 彼の顔めがけて、不意打ちのナイフを投げる。投げる対象からは、その攻撃は見えないような技術を使った。
 これは義手のような瞬発的なパワーが出せなければできない技術である。
 右手から、ツバメの急降下ように放たれたナイフは、狙いすましたように彼の顔へと向かう。
 しかし、空中で放す途中余計な力が入っていたためナイフは半回転し、柄を頭にして飛んでいってしまった。

「ッ…… 甘い」

 彼は何かを慌てるように、顔の前でナイフをキャッチする。
 バリアを使うことはせずに右手を使っていた。
 はたから見るとば、蚊を空中で握りつぶすかのようにナイフをキャッチしているようだが、しかし俺には微々たる焦りのようなものが見えてしまった。
 なんだ……? 今のは。

「不意打ちか…… 弱者の貴様らしいな」

 彼は、何かを断ち消すように発した。
 速度は十分だったが、さすがに誤ってしまった軌道だ。
 いやこれくらいの攻撃は、こんな強者には通用しないのだろう。さすがはS級に一番近い人間だ。

 接近戦はあの見えないブレードに、遠距離はどこにあるのかさえ分からない鉄壁の壁……
 これらを全て読み切ることなんてでき……いいや、やってやるんだよ!
 発想を逆転させるんだ。こちらのペースにもっていけば活路は開くはずだ。
 彼の攻撃は明らかに遅い。剣先生についていけたんだからいけるはずだ。

 俺は銃を奴の顔めがけ構える。
 彼の姿が大きな壁のようにも見えた。
 それは岩窟のようで、今の限界を超えるにはこれくらいはないとな。
 俺は今の自分そしてこの壁を越えて、あの人に少しでも近づく。
 壁があるなら叩き壊すだけ…… ここは接近戦でいこう。拳で行くぜぇえ!!


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