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最弱能力者の英雄譚 〜二丁拳銃使いのFランカー〜
第十一話
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ータバンクにある能力者情報を調べる。
 前回もそうだが何故俺が対戦相手の調べ物をしないのかというと、結局戦場では素性の知らない相手と戦うということが当たり前なので、大して意味は無いと思っていたからだ。


 歳16歳、育成機関取締役、北九州事変にて多大なる戦果をあげる。その若さで全勝無敗の戦闘力を誇り、去年はその健闘を讃え……


「見た? 付いた二名セカンドネームは、『拒絶の王』。第22回生のなかで一番S級に近い存在……」

 写真は、短く後ろに固まった髪、力でねじ伏せる武士のような四角い厳格な顔立ち。
 16歳とは思えない、百戦錬磨の戦士とも言えるそんな顔だった。
 どれほどの戦場を越えてきたのかは彼の顔を見れば分かる。彼は相当のやり手だろう。

「……どんなに強い相手だろうとやるしかないでしょう?」

 あの人のようになりたい。そう願った。それを叶う環境を貰った。
 そうだろうオレ一人ではここに座ってもいないだろうし、このランク祭にも出られなかっただろう。そのために俺を応援している人のためにもやらなければならない。
 昔の戦争は数である程度の戦況が決まったらしい。
 今は能力者の個人的な強さにより戦況が決まる。だからA級はすぐに戦場に送られる。

「あなたがどうしようとも構わない。今更言うのも…… だけど時には引くことも肝心よ あなたには無」

 真剣な顔は、無謀に立ち向かうとする戦士を見るような目で見ていた。
 この言葉でどれほどの重みか――。それでも、それでも。

「俺はやるよ…… 心配してくれてありがとう」

 彼女の顔を見ると、できるだけの笑顔を向ける。そして俺は席を立った。
 無謀と言う彼女に背を向けて。
「なんでいつもそんなに距離を取るの!?」彼女の放ったそんな言葉さえ、今の俺には伝わらなかった。


 闘技館に向けて歩いていた。
 いつものような足取り、完璧とも言える体の調子、機械の腕、足、視覚、嗅覚、聴覚、その全てがいつも通り。
 唾を飲み込むといつものように胃の方へと送られていく音が聞こえる。
 全てが何も変わらなく、特に不調もない。
 意識も変わらない、入ってくる情報を全て処理するこの脳も。

 出場者の待合室まできた。勝つためにと仕上げてきたこの体も鮮明なほど普通。
 何も考えることもなく椅子に座り、黙想を始める。
 余計なことを考えないほど、思考も安定しているのを実感する。

「佐部佑準備を」

 待っていた係である矢吹の言葉。静まり返った待合室は彼の言葉だけが響いた。




「やってやろうじゃあねえか!! 無謀ってやつを負かしにッ!!」




 無謀? こちらはそんなの鼻からわかってんだよ!!
 引け? 誰が引くん
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