第六話
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歩をした方がいいと本で読んだことがある。
「先生、散歩してもいいでしょうか?」
横の生徒の世話をしていた保健室の先生に、散歩をしてもいいかと訪ねてみた。
「今は安静にしてほしいんだけどね。まあ顔色は大丈夫そうだし、ダメだったら早く帰ってくるんだよ」
先ほどの怒鳴り声とは全くと違い、優しい声音でそう言った。随分と歳を食っている先生だが、顔からして昔はかなりの美人だったと分かるほどの人だ。
「はいありがとうございます」
立とうとすると少しくらっとしてしまったが、歩く分には全く問題は無かった。
海を見に浜辺に着いた頃には、夕日は沈みかけていた。
淡いオレンジ色をした雲たちは、これからくる漆黒の世界を運んでくる。
夕日を見て、綺麗だと思った。
ふと剣先生の言葉を思い出した。
「結論は焦らなくてもいい」たしかに、ここを卒業までは後7か月もあり、1週間後には2回戦目。何も急がなくてもいい。
ゆっくり悩めばいい。
無理に答えを出さなくてもいいんだ。俺は何を急いでいたんだろうか。
目の前の霧が晴れたようで、少しだけ楽になった。
しばらくこの夕日を眺めていた。
いつもはこんなにもしっかりと夕日を見てはいなかった為、いつもあるこの綺麗さが逆に斬新で少しばかり感動している。
すると沖の方から、何やら黒い物体が近づいてくるのが見えた。
あれは人か? しばらく様子を見る。
人が、背中を突き出しながら浮かんでいるように見える。
目を凝らした。人だ! 今すぐにでも助けに行かなければ。
素早く立ち、左手にある点滴を引き抜き、浮かんでいる沖の方へと急いで泳いで行った。
ダメだ戦闘で体がかなりダメージを受けている。
疲れのような、鈍っているような感覚が体中を襲う。
なんとか溺れている人を、岸まで連れていくことができた。少し小柄の少女である。
意識が無いのか、顔が青白い。顔は凛とした目が特徴的な美少女であった。
彼女の胸に耳を当てて振動の鼓動を確かめる。鼓動は無い。
血の気が引いていても、綺麗な顔立ちでずっと眺められるほど、とても整っている。
顔を見たい気持ちを抑え、生きているかもしれないためすぐに人工呼吸を始めた。
なんでこういう時に右手が無いんだ…… 右手が無くなっているのを恨む。
10分くらいひたすらやり続けた。体も限界で気合だけで人工呼吸をしている。
体中が悲鳴を上げていた。
もうダメかと諦めていたその瞬間、彼女は口から嗚咽をするように海水を吐き出した。
よかった生きていた。安堵で体中の力が抜ける。そのまま彼女の胸に倒れこんだ。
「げっほげほ、刀拳乱舞の(上手く聞き取れなかった)を見るまでは…… 私は死
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