第五話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「終幕フィナーレだ!! Aランクさんよお!!」
俺はヤツの隠れている物陰へと全速力で向う。
すると彼は、茂みに隠れて覚悟を決めた動物のように物陰から出てきた。
「君は強い、それは認めよう。だが最後に勝つのはこの僕だ――。君だけには、ここまで僕を追い詰めたお礼として、一日一度限りの”奥義”を、見せてやろう」
そうして彼は構える。それも今までに無いようなドッシリとした構えになる。
俺はドバドバと溢れ出たアドレナリンによって、警戒を怠り、獣のように叫ぶ。
「ほざけッ! クソナルシストッ!!」
最後の最後である銃弾を、ヤツの体を目掛けて放つ、放つ、放つ、放つ。
「慙・時雨鎌イ太刀――」
それは一瞬だった。
何が起きたのかなんて俺には分からない。だが分かることはただ一つ。
彼は、俺を切ったのだ。
な、何なんだ? 何が起こったんだ?
思考は現実を認識せずに、左手で銃を構える。
すると右腕からは何かが落ちたような音がして、心なしかそれは軽くなっていた。
目標を捉えた瞬間、俺の痛覚が目覚め始めた。
そして胸から腹にかけて、噴水の水のように血飛沫が切り跡から出る。
腹からは強烈な熱線をあびたような痛み、右腕には劈くような痛覚が襲う。
「いてえええええええええええええええええ」
自我を保てるような痛みではないと、全神経が俺に命令を送っていた。
「これで無能力者と笑われることもなく、能力者と蔑まれることもない。右腕を無くし、これで君は晴れて”普通の人”になれる」
後ろから声が聞こえた。今にでも首を切りそうな位置に彼が立っていた。
「元々こんな戦いフェアじゃないんだ。能力者と無能力者の戦いなんてたかが知れている。まあ、あえて僕がハンデを使ったんだ。必殺技を使わないという”ハンデ”をね」
ついに目の前が漆黒の世界へと進み始めた。
わずかながらの理性で俺は慢心をしていたと自分を分析する。
(あれだけ頑張って、剣先生に修行までついてもらったのに…… こんな一つの間違いで俺は)
薄れていく後悔と意識の中で、今までのことが走馬灯のように駆け巡る。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
剣先生と修行していた時のことを思い出した。
「少し私の昔話をしようか」
いつもの1対1のトレーニングを終え休憩していたところ、剣先生が話しかけてきた。
「聞きたいです」
その時の俺は剣先生については、スリーサイズと家の場所ぐらいしか分からなかった。
「そうだな…… 私が傭兵を始めた時の話をしよう」
そう言うと彼女は、遠い過去を懐かしむように視界を前に向けた。
「傭兵をやる前の私
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ