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最弱能力者の英雄譚 〜二丁拳銃使いのFランカー〜
第一話
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きらめて生きろと言わんばかりに。
 それが俺のこの十数年の生涯。
 正確にはこのESP学園に来る前の記憶が無くなっているので五年間だ。

 そんな悩みを打ち消すように彼女は話し始めた。

「能力が使えないお前でも、素質も体格もいいと私のこの目が見抜いている。3か月先のランク祭に向けて私が指導してやろうか?」

 授業そっちのけで、彼女の目は真剣だった。
 それはもう剣美咲という名前に恥じないほどまっすぐな眼だ。

「えッ……」

 突然すぎて理解が遅れてしまう。
 去年、俺は一度ランク祭に出させてくれと、担任である矢吹に相談したことがある。
 返答はただ無言で突き返されただけだ。
 能力が使えないというだけで、ランク祭に出場したらダメだ。
 そんな現実自体が理不尽で腹を立てたのを覚えている。
 もうこのまま馬鹿にされて終わってしまうような気がして、どうしようもなく追い込まれた一年前のことを思い出した。

 そしてすべてを諦めていた。そういうつもりだった。

「出場許可なら、上の連中から許可が出ているから大丈夫だ」

 そう彼女はそう言い、火のついた煙草を唇で咥える。
 その姿はどうもこちらを気にしているような気がした。

 つもりでいた…… 諦めていたつもりなんだと……

「こ、根性は無いですが…… よろしくお願いします!」

 気づけば彼女に精一杯頭を下げていた。
 俺はまだあきらめてはいなかったのか。
 そんな天邪鬼な自分を客観視して、ついつい口元が緩んでしまう。

「ま、根性が無いのは私も知っている」

 彼女はこちらを見上げると、晴れやかな顔で迎え入れてくれた。
 俺も心が緩んでいくのを感じている。

「ちょっと…… 素質があるとか言いながらそれはないッスよ」

 俺はダメ出しをするように言う。彼女はガハハと豪快に笑っていた。

「まあまあ、そうとなれば、来週からは私の家で特訓だ。みっちりしごいてやれるな」

 彼女は俺を見て笑っていた。
 それは、いままで誰にも見せたことはないというくらいに、とても柔らかく、いつもよりも女性らしい笑顔であったからだ。
 思わず、胸がキュンと彼女の笑顔に持っていかれると思ってしまうくらいにだ。、

 そのまま授業は終わり、この自習室のカギを渡され、『用紙に書き終終えたのなら職員室にある私の机に提出しておけ』と言われた。

 まあ今日が俺の生涯の運命の分かれ道だとは思いもしなかった。


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