79 凶暴な小学生
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こんな遅くに一人で歩いてちゃ危ないよ」
「あ、すみません・・・」
「おうちはどこだい?」
「・・・帰りたくない」
三河口は何度もそう言ったが警察官はそうはいかなかった。三河口は交番へと連れて行かれた。学校で騒ぎを起こした事や兄弟喧嘩で家を出された事は一応喋った。とりあえず父が来てくれ、なんとか家に入れてくれたが、それでも母や兄との関係は険悪なままで何も変わらなかった。
そしてこの凶暴な態度は教師にまで矛先が向かうようになる。3年生の頃の担任の先生には「何も成長してない」と言われ、教師を吹き飛ばした。4年生にはこんな自分が嫌だと思い、飛び降り自殺を図った事がある。その時だった。即死してもおかしくないはずなのに、なぜか助かった。自分は死んで当たり前だと思ったのに死ぬ事もできないのか。これが学校でも問題となり、少し学校を休むように言われた。母は夏休みに親戚のおばさんの家に連れて行かないと言った。しかし、事情を母から聞いた叔母はそれは可哀想すぎる、娘達も三河口と会いたがっていると言われて何とかなった。従姉達はそんな凶暴な自分を恐れずに可愛がってくれた。三河口自身もこの時にようやく自分が自分らしくいられるのはこの家にいる時ではないかと思った。だが、その叔母さんの家の娘達もいつまでもいてくれるわけではなかった。この間に長女のゆりが大学に進学するという事で一人暮らしをする事となり、清水を離れてしまった。
5年生の頃の夏休み、三河口は従姉のさりと二人きりになる時があった。確か風呂から出た後にさりに部屋に呼ばれた時である。
「健ちゃん」
「さりちゃん・・・?」
「お母さんから聞いたんだけど、家でも学校でもとても辛い思いしてるの?」
「うん、怒ると急に暴れて自分でも抑えられないくらいになるんだ。それで兄貴からも嫌われたし、父さんや母さんも俺を少年院に入れようと考えてるんだって」
「ええ!?そんな、酷い!」
「それに、学校に戻ってもまた何か問題起こすんじゃないかって思うと心臓がビクビクして体もそわそわして・・・」
さりはその泣きそうな従弟の様子が正常ではないと思った。
「健ちゃんはこの家の方がいい?」
「うん、いつも帰る度に寂しくなってしょうがないんだ」
「そうなんだ。私も寂しいわ。ゆり姉はもう家を出ちゃったけどあり姉ももう高ニだから再来年になったら家を出るかもしれないの。そうなると私一人よ」
「そうなんだ・・・」
「健ちゃんがここにいて私の弟になってくれたらいいかも」
「うん、俺もさりちゃんと一緒だったらな・・・」
「だが、俺は本当に少年院行きとなったんだ」
「ええ!?」
皆は驚いた。今の三河口の性格からするとありえない事であろう。しかし、あれだけ暴れたというのならば仕方がないのかもしれないともかよ子は思った。
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