ターン35 家紋町の戦い(前)
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自分こそがこの男たちの狙いなのだと気づいたときには、すでに後ろに回り込んだ男の片方によって退路が塞がれていた。その顔が暗がりから出たことで判別がついたのだが、片方の男はマスクで顔を隠しているが、もう1人の若い男は素顔を丸出しにしている。
事態は何ひとつ呑み込めないが、この2人の不審者にはこちらへの害意があることだけはわかる。そして幸いにも、ここでデュエルをする気だった少女たちの通学カバンの中にはデッキとデュエルディスクが入っている。
少女たち?そう、少女「たち」だ。いかに才気溢れる八卦九々乃といえど、2対1となると苦戦は否めない。この場にいるもう1人の少女も、もはや守られるだけの立場ではいられない。糸巻、八卦、清明。いきなり屈指の実力者たちの戦いから実戦を知った文学少女は、この場で一番の初心者でありながらも秘められていたセンスとパワーレベリングの成果によって急速に花開きつつあった。
だから、竹丸は声を掛ける。自分をかばおうとする目の前の少女に、助けてもらった借りを返すために。もうあの時の自分とは違うのだと、自分の足で前に出る。
「竹丸さん……?」
背後の動きに気が付いた八卦がキョトンとした顔で振り返ると、少女と背中合わせの状態で背後の不審者と対峙した竹丸が眼鏡の奥で小さく笑った。その様子から言いたいことを察した少女が、言葉よりもなお雄弁にその本心を語る不安と心強さの入り混じった複雑な笑顔で返す。清掃用ロボが店の外からカメラをひっそりと向けていることには誰も気が付かないままに、4つの声が同時に響いた。
「「デュエル!」」
「八卦ちゃん……!それに竹丸ちゃんまで……!」
一方画面の向こう側、それを見つめる糸巻は、我知らず指が白くなるほどに拳を握りしめていた。感情むき出しにする宿敵の様子にやや呆れつつ、鳥居が先を促した。
「貴女にも、そんな人間らしい表情ができたんですね」
「アンタの……アンタの差し金か」
「おや、ようやく口をきいたと思ったらそんなつまらないことを。そもそも、貴女は何に対しても無頓着なんですよ。13年前のあの時、貴女が動いたからこそデモ行進に賛同したデュエリストがいた。つい先日の鳥居にしたって、私は貴女が職務放棄したアフターフォローをしたまでのことです。そして今も、少し考えればわかりそうなものでしょう。あの少女は貴女の妹分だ、私なら何かしら目を離さないようにしますがね」
「……」
反論できず押し黙る糸巻にしてやったりと酷薄な笑みを浮かべ、顎で画面を指し示す鳥居。
「ほら、そんなことを言っている間に。始まりますよ」
「俺のターン。先行は貰った!永続魔法、スローライフを発動!これにより互いのプレイヤーは1ターンのうちに、通常召喚か特殊召喚
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