第百六十四話 土佐沖にてその十
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「いいものだね」
「はい、ただやっぱり私としては」
「噛むのがいい?」
「そうですにゃ」
こう言って今度は噛んだ。
「コシと風味を味わうことが」
「まあどんな食べ方でもよかとよ」
美鈴はそれにこだわらなかった。
「美味しかったら」
「そうですね」
山本は美鈴のその言葉に頷いた。
「結局は」
「そうたいな」
「自分がええと思う食い方で食えば」
「それでよかとよ」
「わしもそう思いますけえ」
「というか」
井伏も言ってきた。
「この素麺が美味かったらええことですけえ」
「そうたいな」
「それでこの素麺は美味いですけえ」
「よかとよ、三輪素麺は」
この素麺のこともだ、美鈴は話した。
「関西に来てはじめて食べたたいが」
「美味しいですよね」
「他のお素麺とは違うたいな」
瑠璃子にもこう答えた。
「噂以上たい」
「奈良の誇りですさかい」
瑠璃子は奈良県民として笑って話した。
「やっぱり美味しいです」
「まあ奈良あまり美味しいもんないけどな」
雅美は食べつつ言った。
「後は柿とかほうれん草とかあるけど」
「それと天理ラーメンに大和牛に」
由香はこうしたものを挙げていった。
「奈良時代のお料理やね」
「出していったらあるけど」
紗枝の口調ははっきりしないものだった。
「けどあまりな」
「美味しいもんないな」
「奈良って」
「奈良県民にしてみても」
「それ起きた世界でもこの世界でもやな」
田中は四人に問うた。
「美味しいもん少ないんやな」
「そやで、どうもな」
「何かこれといって美味しいもん少ないねん」
「この三輪素麺はともかくとして」
「美味しいもん多いって印象はないわ」
「そうか?柿の葉寿司はどないや」
田中は四人にこの食べもののことを問うた。
「これは」
「柿の葉寿司?食べ飽きたわ」
「もう奈良県民にとっては馴染みなんてもんちゃうわ」
「そやから今もお話に出さんかったんや」
「あれはどうでもええわ」
「何かあまりええ食べもんちゃうみたいやな」
田中は四人の話から言った。
「柿の葉寿司は」
「普通のお寿司がええわ」
「握り寿司な」
「巻き寿司もええけど」
「そうしたお寿司の方がええわ」
「奈良、大和っていうと」
ここで雪路はこう言った。
「義経千本桜の寿司屋も」
「あれ確か五位堂かどっかやったんちゃう?」
「新ノ口やった?」
「橿原か田原本の辺りやろ」
「大体その辺りのことやろ」
「何か凄いローカルな話題だけれど」
長崎、この世界では肥前の出身である雪路にはわからない話題だった。今は神戸にいるが関西のことはまだ疎いのだ。
「その辺りなのね」
「そやで、昔はあの辺り海と遠かったから握り寿司
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