偽・新約篇
第2章
アイツのいない世界《後篇》
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だっけ…」
――携帯ショップ
「大覇星祭の罰ゲーム、とか言ってペア契約させたのよね。
今でも契約はそのまんまになってる。アイツからかかってくることは永久にないのにさ…」
美琴が回っている場所の共通点、それは上条当麻とのなにがしかの思い出がある場所だということだ。
だからこそ最後に美琴が立ち寄るのは、今の美琴――上条当麻に恋をしている美琴――が始まったともいえる場所で、一番強い思い出が残っている場所――
「……アイツが私をあの実験からすくい上げてくれた場所。あ、そう言えばアイツに雷なんか落としたこともあったっけ?」
――あの鉄橋に美琴は立ち寄っていた。
完全下校時刻を大幅にオーバーした時間帯、教師に見つかればすぐにでも寮のほうに連れ戻されるだろう。
だが幸か不幸か美琴は今まで教師に出会わずにくることができていた。
御坂美琴は強い。
能力がというわけではない。もちろん能力だけ見ても学園都市で上から数えた方が早いのだろうが、そういう強さではない。
美琴の強さはその心やそのあり方だ。
障害なんてものともせずに立ち向かっていく強さ、たとえ敵であっても救い上げようとする優しさ(甘さとも言えるかもしれないが)、仲間を信じることのできる心。
人としてすばらしいものを多く持った少女だろう。
だが、いくら強かろうと彼女はまだ15歳の少女だ。強がりで意地っ張りで、本当は怖くてつらくてしかたなくても身近な人間にもそれを見せようとはしない。
故に美琴がただの“女の子”でいられたのは、弱い自分を全部見せられるのは彼の前だけだった。
だからいまの彼女は…上条との思い出を回った、いまの美琴はただの“泣き虫”な女の子だ。
美琴の瞳に涙が浮かぶ。無意識のうちに“上条当麻”を自分の胸の内に感じて、今だけは泣いてもいいと感じて、心の中の上条当麻に縋りつくようにして。
だからいまの美琴は素直だ。誰も聞いていないから、自分の中の当麻しか聞いていないから。
そんな美琴の心情を表わすかのようにどんよりとした雲からしずくが落ちてくる。
すぐに雨は本降りになりすべてを包んでいく。
「…会いたぃよぉ、とぅまぁ」
そう呟く美琴の頬を一筋のしずくが流れ落ちた。
その日、佐天涙子と初春飾利が御坂美琴を見つけたのは全くの偶然だった。
2人が美琴を見かけたのはもうそろそろ完全下校時刻という時間帯、風紀委員第一七七支部からの帰りのことだ。
とりあえず声をかけようかと思った二人だったが美琴の様子がおかしいことに気が付いたのだった。
「ねぇ
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