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ケルベロス
第二章

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「望みを適えてやったまで、感謝されることはな」
「ないか」
「わしはそう思うがな」
「しかしあの者達はだ」
 そのヘカトンケイル達はといのだ。
「感謝している、だからな」
「冥界に来た時はか」
「会ってやってくれ、そしてな」
「あの者達からの感謝の言葉をか」
「受けてくれ」
「そこまで言うならな」
「そしてだ」
 ハーデスはさらに言った。
「ケルベロスのこともな」
「見ろというのだな」
「そうだ、何故わしが可愛いというかな」
「そのことをだな」
「見てくれ」
「そう言うならな」
 ゼウスも頷いた、そうしてだった。
 この時は天界での宴を楽しんだ、そして今度はハーデスがゼウスをもてなすと約束した。そして今は別れたが。
 ゼウスは冥界に行く時に共に行く正妻のヘラに話した。
「さて、ヘカトンケイル達ともだ」
「会ってですね」
「あの者達の言葉を受けてな」
 感謝のそれをというのだ。
「ケルベロスともな」
「会ってですね」
「そしてな」
「ハーデスの言う通りにですね」
「可愛いかどうか見るが」
 それでもというのだ。
「わしはどうしてもな」
「ケルベロスがですね」
「可愛いとはな」
 その様にはというのだ。
「思えん」
「それは私もです」
 ヘラもゼウスに答えた。
「ケルベロスといえば」
「あまりにも強くな」
「そして恐ろしいです」
「あれだけ強い犬はいない」
 ゼウスは言い切った。
「わしですらだ」
「倒せないですね」
「神々ですら倒せないまでの怪物だ」
「三つの首に無数の蛇の鬣に」
「尾まで蛇でな」
 そしてというのだ。
「唾液は猛毒だ」
「そこまでですと」
「もうだ」
 それこそというのだ。
「恐ろしいだけでだ」
「可愛いとはですね」
「思える筈がない」
「全くですね」
「ハーデスもわからないことを言う」
 こうも言った。
「まことにな」
「全くです」
「しかし約束した」
 そのハーデスと、というのだ。
「だからな」
「それで、ですね」
「これからな」
「冥界に行ってな」
「そうしてですね」
「それからだ」
「宴と楽しみ」
 ヘラも応えた。
「そしてですね」
「そうだ、かつな」
「ヘカトンケイル達と会い」
「ケルベロスともな」
「そうされますね」
「これからな」
 こう言ってだった。
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