第一章
[2]次話
ケルベロス
三つの首を持ち鬣は無数の蛇であり尾も一匹の蛇だ。
ケルベロスはそうした姿の犬だ、冥界の出入り口を守護している。
そのケルベロスについてゼウスはこう言った。
「恐ろしい存在だ」
「そう言うか」
「そうでなくて何だ」
こう冥界の主ハーデスに返した。
「あの犬は」
「可愛いと思わないか」
「思うものか」
ハーデスにまた返した。
「何故思える」
「ははは、これがだ」
「実はか」
「可愛いぞ」
「唾液は毒だな」
「それも猛毒だ」
「しかもあの姿だな」
「ヘラクレスも掴むころは出来たがな」
そして捕えることはというのだ。
「しかしな」
「それでもだったな」
「倒せなかった」
「それだけの強さがあるな」
「ケルベロスを倒せる者はだ」
ハーデスは笑って話した。
「それこそだ」
「いないな」
「神々でもな」
「そうだな、だがな」
「可愛いか」
「わしはそう思う」
「兄弟だが」
それでもとだ、ゼウスは同じ親を持つハーデスに話した。
「そこはわからん」
「ははは、そう言うか」
「言わずにいられない」
どうしてもというのだ。
「わしはな」
「あれで共にいるとな」
「可愛いのか」
「そうだ、お主も一緒にいればわかる」
「あの犬とか」
「それでな」
「それはない」
ゼウスは今度は断言した。
「何があってもな」
「飼っているわしが言ってもか」
「わからん」
「ならいい、それでだが」
ハーデスはゼウスにあらためて話した。
「一ついいか」
「何だ」
「お主が今度こちらに来た時だが」
冥界にというのだ。
「面白いもてなしをしたい」
「どういったものだ」
「ヘカトンケイル達と話してくれるか」
「あの者達とか」
「あの者達は今もお主の取り決めに感謝しておる」
「あれか、タンタロスに閉じ込めているティターン達の見張りだな」
「自分を虐げていた者達を見張る」
つまり立場が逆になったというのだ。
「そのことがだ」
「非常にいいか」
「実に心地いいとな」
「実はあの者達はな」
どうかとだ、ゼウスは話した。
「天界に置きたかった」
「五十の頭で至るところを見て百の腕を自在に操るからな」
「あれだけ頼りになる猛者達はいない」
「だからだな」
「天界に置いてな」
そしてというのだ。
「護りとしたかったが」
「あの者達が言ったしな」
「ティターンとの戦に勝った褒美としてもな」
その意味でもというのだ。
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