第三章
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「それがしの目をじっと見て語っていた」
「嘘を言っている目ではないですね」
「間違いなく」
「左様ですね」
「あの者の目は」
「そうだ、だからだ」
それでというのだ。
「疫病が流行ればな」
「その時はですね」
「絵を飾ったりしますね」
「そうしますね」
「あの者の言う通りにな」
そうしようと言うのだった、そしてだった。
アマエビの言ったとおりに豊作が六年続いた、ここで氏家は豊作をよしとしてそのうえで周りに話した。
「やはりな」
「これは、ですな」
「アマエビの言った通りですな」
「まさに」
「ではだ」
豊作が六年続けばというのだ。
「後はだ」
「疫病ですね」
「それが来ますね」
「このままですと」
「そうなるな、ならだ」
その時はというのだ。
「絵を使うぞ」
「わかりました」
「それでは」
こう話してそうしてだった。
氏家は藩にも話して備えた、そして実際に疫病が来たがその時にだった。
藩の心ある者達がアマエビの絵を飾ったり人々に見せたり戸口に貼ったり身に着けたりした。するとだった。
実際に疫病から救われた、それで氏家は言った。
「アマエビの言う通りになった」
「まさに」
「左様ですね」
「このことは」
「まことによかったですね」
「そう思う、そういえばだ」
ここで氏家は周りに話した。
「文政の頃にアマエビかどうかわからないが」
「ああした人魚の絵をですか」
「アマエビが言った様に飾ったりした」
「そうだったのですか」
「その様だ、そして疫病を避けた」
文政の頃にそうしたことがあったというのだ。
「そしてそれがしがアマエビと会ったのは弘加の三年だったが」
「文政の頃から十六年程経ていますが」
「この肥後にも来た」
「疫病が流行ると察して」
「そうなのですか」
「そうかも知れないな、そしてこれからはな」
氏家はさらに話した。
「疫病が流行ればな」
「アマエビの絵を飾りますね」
「そうしますね」
「そして難を避ける」
「そうしますか」
「アマエビの善意を使わせてもらおう」
アマエビが言った通りにというのだ。
「そうさせてもらう」
「そうですね、では」
「そうさせてもらいましょう」
「これからも」
「是非な」
こう言って実際にだった、氏家はそれからも疫病の話が出ればすぐにアマエビの絵を出して難を逃れた。肥後に伝わる古い話である。
この古い話が令和になって蘇った、まさかと思う話であるがそれだけ疫病が人を悩ませるものだからであろう。アマエビは今にも生きる魔除けを人々に残してくれた。そう考えると実に素晴らしい存在である。
アマエビ 完
2020・7・
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