第二章
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「代官としてな、名を氏家為信という」
「氏家殿か」
「そう呼んでくれていい、そしてお主は何者だ」
「アマエビという」
「アマエビ?」
「海にいるそちらの言葉で妖怪というものと思えばいい」
こう氏家に述べた。
「神と言ってもな」
「そういったものか」
「左様、実は伝えたいことがあって来た」
「それは何だ」
「この地のことだ」
氏家が代官として治めているこの地のことだというのだ。
「この地のことで話したことがあって来たのだ」
「そうだったのか」
「この地は今年から六年豊作が続く」
「六年か」
「そうだ、だがだ」
「だが?」
「若しかすると疫病が流行るかも知れない」
このことも言うのだった。
「それが気になってだ」
「来たのか」
「豊作を伝えると共にな」
「そうだったのか」
「うむ、それでだ」
アマエビはさらに話した。
「疫病が流行った時だが」
「その時どうすればいいか、か」
「その時は私の絵を見せるのだ」
「お主の絵をか」
「描いてな、実は私は疫病の魔除けになる」
このことを氏家に話した。
「だからだ、その時はそうするのだ」
「そうすれば疫病を避けられるか」
「そうなる、そうするのだ」
「わかった、ではだ」
氏家はアマエビの言葉に頷いて述べた。
「これよりだ」
「描いてくれるか」
「そうさせてもらう」
こう答えてだった。
早速氏家はアマエビの絵を描かせた、それが終わると彼はアマエビに対して強い顔でこう言ったのだった。
「確かにだ」
「描いてくれたか」
「そうさせてもらった、この通りな」
アマエビ自身にその絵を見せて話した。
「どうだ」
「私そっくりだな」
アマエビもその絵を見て述べた。
「いい感じだ」
「そうか」
「ならばだ」
「この絵をだな」
「若し疫病が流行ったら」
その時はというのだ。
「その絵を飾るのだ」
「ではその時はそうさせてもらう」
「そうしてくれればうれしい」
氏家にこう言ってだった。
アマエビは満足した様に海に戻った、そうしてだった。
氏家はその彼を見届けてから周りの者達に話した。
「ではな」
「はい、若しもですね」
「疫病が流行れば」
「その時はですね」
「その絵を人々に見せたりな」
周りの者達にこう話した。
「戸口に絵を貼ったり身に着けてだ」
「疫病から身を守りましょう」
「そうしましょう」
「あの者澄んだ目をしていてだ」
アマエビのその目の話もした。
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