第六章
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「確信していたわ」
「そうだったんだな」
「阪神は優勝するってね」
「根拠は投手陣か。けれどな」
智昭はこここでこうも言った。
「阪神ファンって毎年言ってるよな」
「今年は優勝だって」
「ああ、そうだよな」
「それはそうね」
「やっぱりそうだよな」
「けれどね」
未可子はさらに言った。
「私はね」
「それでもか」
「そう、阪神は今年優勝するって思っていたから」
「プロポーズもか」
「そう答えたのよ」
阪神が優勝した時にというのだ。
「そうね」
「そうだったんだな」
「ええ、じゃあ入籍はね」
「そのことな」
「今から書いて」
その入籍届の書類を出しての言葉だ。
「そうしてね」
「区役所に提出か」
「そうしましょう」
この言葉は笑顔で出した。
「これから」
「それじゃあな」
「ええ、本当によかったわ」
未可子は満面の笑みで言った。
「そうなると思っていたけれど」
「阪神が優勝してか」
「結婚出来てね」
「だよな、じゃあ明日な」
「入籍届出しましょう」
区役所にというのだ。
「二人で」
「そうしような、後はシリーズだな」
「シリーズね、もうそっちはね」
未可子はそちらについてはあっさりとした口調で言った。
「別にね」
「勝った方がいいだろ」
「それに越したことはないけれど」
それでもという口調での返事だった。
「もうね」
「それでもか?」
「九年前のことがあるから」
「ロッテとのあれか」
「正直あれよりましだったらってね」
その様にというのだ。
「思ってるだけよ」
「あれは凄かったな」
「いいところなかったからね」
俗に三十三対四と言われている、最早伝説となっているロッテとの二〇〇五年の日本シリーズである。
「あれよりはね」
「ましだとか」
「いいと思ってるわ」
「だから日本一まではか」
「それは出来たらよ」
そこまではと言ってだ、そしてだった。
未可子はビールを出して智昭と乾杯した、次の日二人で話した通りに区役所に入籍届を出した。シリーズは負けたが未可子は満足していた。優勝して結婚出来たことは事実だったから。そして実家の方も経営がよかったのでもう何も言うことはなかった。
優勝した時に 完
2020・5・16
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