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木馬を見て
第四章

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「ならば」
「そうだ、あの木馬にはな」
「何かありますか」
「どうもな、だから何かあれば」
 その時はというのだ。
「我等だけも戦ってだ」
「トロイアを守りますか」
「それが出来ないならば」
 その場合はというのだ。
「民達を一人でも多くだ」
「逃がしますか」
「そうする、そなたにも頑張ってもらう」
「それでは」 
 ディポボスはヘクトールの言葉に頷いた、そうしてだった。
 武器を手にしつつ鎧兜を身に着けたままヘクトールと彼が率いる将兵達と共に宴に入った、彼等だけはあまり飲まず。
 トロイアの門が開かれた時果敢に戦った、そして。
 トロイアから多くの者を逃がすことが出来た、ディポボスは後詰を務めていて。
 何とかヘクトールと共に逃げることが出来た、そしてそこで言った。
「若しです」
「木馬にか」
「その中から兵が出たそうなので」
 このことをヘクトールに言うのだった。
「私が思っていた通りでした」
「そうだったのか」
「はい、若しやとです」
 その様にというのだ。
「思って木馬に声をかけましたが」
「思った通りだったな」
「はい、全くです」
 まさにというのだ。
「その通りでした」
「そうだったか」
「そしてその兵達が城門を開けました」
 その開けられた門からギリシアの軍勢が入りトロイアは陥落したのだ。
「そう思いますと」
「そなたは正しかったな」
「それだけに無念です」
 木馬の兵達がいることを突き止められずというのだ。
「全く以て」
「そうだな、だがな」
「だがといいますと」
「我々は生きることが出来た」
 何とかとだ、ヘクトールは話した。
「なら後はだ」
「生き残ったトロイアの者達と共にですか」
「新たな国を築こう」
「そうすべきですか」
「国は滅んだが民は残った」
 それならというのだ。
「また国を興せる、だからな」
「それで、ですね」
「今は去ろう、アイアネアースやラオコーン達も落ち延びた様だ」
 頼りになる彼等もというのだ。
「ならその者達と合流してな」
「そしてですね」
「また国を興そう、いいな」
「それでは」
 ディポボスはヘクトールの言葉に頷いた、そうしてだった。
 彼と共に落ち延びていった、後に彼等がカサンドラやイオラトステス、アイアネアース達と再会し長い旅を経てローマを建国していくことになる。残念ながらローマを建国する時ヘクトールはこの世を去っていたが木馬により敗れた彼等は後に偉大な街を築くことになった。ギリシア神話にある古い話である。


木馬を見て   完


                 2020・4・17
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