第三章
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木馬の中で動揺が走った、中に潜んでいた英雄の一人ディオメデスは思わず立ち上がりそうになったが。
そこを今回の策を考えたオデュッセウスに抑えられて耳元で囁かれた。
「落ち着け、ここはトロイヤの中だぞ」
「そ、そうだったな」
ディオメデスもその言葉に頷いた。
「ここは」
「我々は木馬に潜り込んでいる」
「そしてトロイヤの中にいるな」
「だからだ」
「ここに我々の妻がいる筈がないか」
「私の妻もギリシアにいる」
トロイヤにはいないというのだ。
「間違いなくな、だからだ」
「それでだな」
「今はな」
まさにというのだ。
「落ち着きを取り戻してだ」
「そしてか」
「時を待つのだ」
「トロイヤで宴が開かれてか」
「皆酔い潰れて寝静まった時にな」
まさにその時にというのだ。
「我々はここから出てだ」
「門を開けるな」
「そうする、だから今はな」
「落ち着くことか」
「そうだ、皆ここは落ち着け」
ディオメデス以外の者達にも話した。
「いいな」
「それではな」
「そうだ、今はそれが大事だ」
こう言ってだった、女の声に名前を呼ばれて思わず応えようとした話かい英雄の口元を抑えもした。
そしてだ、彼等は騒がない様にした。
反応は見られない、それでだった。ディポボスもこう言った。
「何もないな」
「そうですね」
「特にです」
「反応はありません」
「これといって」
周りの者達も答える。
「ならですね」
「木馬の中には誰もいませんね」
「左様ですね」
「考え過ぎだったか」
ディポボスは首を捻りながら述べた。
「どうやら」
「その様ですね」
「ではそろそろ宴がはじまりますし」
「そちらに行きますか」
「いや、ヘクトール様に呼ばれているな」
ディポボスはここで周りの者達にこのことを話した。
「だからな」
「では、ですね」
「ヘクトール様の御前に参上し」
「そしてですか」
「あの方の指示を仰ごう」
こう言ってだった。
ディポボスは周りの者達を連れてヘクトールのところに赴いた、すると彼はディポボス達にこう命じた。
「戦の用意だ」
「戦ですか」
「まさかまだ」
「ギリシアは」
「用心をしてだ」
それでというのだ。
「この度はな」
「そうですか」
「あの木馬、何かあるとだ」
ヘクトールはさらに言った。
「妹も言っている」
「カサンドラ様が」
「イオラストレスがな」
正確に言えばというのだ。
「妹の言葉を唯一信じられる男がな」
「あの者は嘘を吐きません」
ディポボスもこのことは知っている。
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