第四章
[8]前話
太宰は友人と共に家に帰っていった、その間ずっと亡者火は二人の後ろをついていったがそれでもだった。
それ以上のことはなく家に戻るとだった。
迎えた使用人がその火を見て太宰に言ってきた。
「修治様、これは」
「うん、亡者火だよ」
太宰は家の使用人に何でもない顔で答えた。
「これは」
「本当にいたんですね」
「何でもないよ、どうしてもというのなら」
太宰は使用人にさらに話した。
「塩をかけたらいいよ」
「それでいいですか」
「ずっとくるなら」
それならというのだ。
「そうしたらいいよ」
「それだけでいいですか」
「いいよ、ではね」
「それでは」
「家に入ろう」
こう言ってだった、太宰は友人と共に家の中に戻って後は二人で飲んだ。そして友人が帰る時にはもう亡者火はいなかった。
太宰は戦争が終わり東京に戻ると編集者、出征したが無事も戻ってきていた彼にそのことを話した。すると。
編集者は太宰に笑ってこう言った。
「それはまた」
「面白い話だっていうんだね」
「はい」
こう太宰に話した。
「それはまた」
「それじゃあ」
太宰は編集者のその話を聞いて言った。
「このことを書こうか」
「いえ、それはです」
「駄目かい?」
「はい、太宰さんの作風ではないですね」
「鏡花さんの方になるかな」
「そうですね、ですが面白い話とはです」
このことはというのだ。
「事実ですね」
「そうなんだね」
「ですから私はこのお話を覚えておきます」
「僕の作風だから書かないにしても」
「そうです、他の人に伝えてもいいですね」
「いいよ」
太宰は編集者にあっさりとした口調で答えた。
「別に隠す話でもないと思うし」
「それで、ですね」
「君の好きにすればいいよ」
太宰は編集者に笑って話した。
「そうしたらね」
「はい、それじゃあ」
編集者は太宰のその言葉に頷いてそうしてだった。
彼はこの話を友人にも家族にも知人にも話していった、そしてだった。
この話は今も残ることになった、太宰治という作家の彼の小説に書かれなかった逸話の一つである。彼の四十年の生涯の中にはこうした話もあった、この話を聞いて面白いと思いここに書き残すことにした。一人でも多くの人がこの話を知ってもらうとすればこれ以上有り難いことはない。
亡者火 完
2020・3・15
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