偽・新約篇
第1章
アイツのいない世界《前篇》
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黄泉川は美琴がどうして強くなろうとしているのかなんて知らない。
少なくともそれは他人である自分が容易く踏み込んで良い物ではないはずだ、と黄泉川は思っている。
でも…と黄泉川は思う。
(御坂は…子供は笑ってなきゃだめじゃんか。
私らはこの子たちを護るために居るじゃんよ)
だから黄泉川はそれをできていない自分をふがいないと思う。
それでも黄泉川は自分にできることはすべて美琴に叩きこんだ、それが今の自分が唯一、御坂美琴にやってやれることだと思っていたから。
黄泉川は訓練が終わると丹念に薬を塗ってやり、その間に疲れから寝てしまう美琴を寮まで送り届ける。
美琴を送り届けると、毎日迎えに出てくる風紀委員の少女と美琴が中に入るのを見送ってから黄泉川はいつもの屋台に向かう。
(後輩にまで心配かけてんじゃねーじゃん、御坂。
ま、だから早く元気になるじゃん)
そう心の中で呟きながら。
午後6時半頃、美琴は目を覚ました。黄泉川に訓練を付けてもらった後は大抵、意識を保てずに寝てしまい、黄泉川と黒子に運んでもらうことが多いのだ。
それで最近は黄泉川や黒子に迷惑をかけることが多く少しだけ申し訳なく思っている。
(私、また寝ちゃったのか…。あーあ、また今日も黄泉川さんからは一本とれなかったなぁ)
美琴はそう思いながら体を起こした。
自分の眠るベットの反対側に目線を向けるとそこには見慣れた姿がある。
自分の後輩でパートナーで親友と言える少女、白井黒子がベットに腰掛けていた。。
「あ、お目覚めですの?お姉さま」
「あ、黒子…また迷惑かけちゃったみたいね」
「これくらいならお安いご用ですの、で・す・が、お姉さま?」
「な、なによ?」
白井は美琴が目覚めた美琴に声をかけた後、少しだけ呆れたような声音と表情で美琴に『ずいっ!』っと顔を近づける。
美琴としてはお説教はごめんこうむりたいところなので少しどもってしまう。
「…もう少しご自愛くださいませ。
こうも毎日、傷だらけで帰ってこられては黒子も流石に心配でたまりませんの」
「…ごめん、それに関しては返す言葉もないわ。でも危険なことをしてるわけじゃないから、ね?
黒子それだけは信じて?」
「…はぁ、わかりました」
(お姉さま、本当に何がおありになりましたの…)
美琴にそう返事をしながら白井は別のことを考えていた。いまの美琴の様子が何から来ているかについてだ。
ロシアから帰ってきた美琴は周りにそれを隠す余裕が無いぐらいに落ち込んでいた。
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