偽・新約篇
第1章
アイツのいない世界《前篇》
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うがよっぽど重いわよ。
だから、ね?
後ろばっかり見て、後悔ばっかりなのは今日でおしまい。
たまに振り向くのはいい。だけどアンタは真っ直ぐに顔をあげて歩かなきゃ。いまは泣いてもいいから、明日からはアイツの大好きだったアンタに戻るの。約束できる?」
「ッ…ぁあ、ひぐっ…ど、ぅまぁ、ぅぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
私がそう言うのを聞いた後、禁書目録は私に縋りつき赤子のように泣いた。私の制服が涙で濡れるけれどもそんなのは気にならなかった。
私はそんな禁書目録の髪をすくように撫でる。
そんな禁書目録を見ながら、ふと私は思った。
私が禁書目録に言った言葉、これには私にだって当てはまる。いまは泣いてもいい、たまにアイツを思い出して泣くのもいい。でも、アイツがいない世界でも顔をあげなきゃいけない、後ろばっかを見てちゃいけない、未来に向かって歩かなきゃいけない。
だけど……だけど、私が何も偽らないでいられた場所、弱いところを見せてもいい場所はもう消えてしまっていた。
(私はいったい何処で泣けばいいんだろう…)
美琴はそう思ったあの時から一度も涙を流していない。
あの日以降、美琴は能力開発や戦闘訓練に打ち込む時間が増えた。
能力開発はイメージトレーニングやAIM拡散力場の完全制御を目指す訓練が主体だったが、戦闘訓練は我流でやるのには限度があるため美琴は知り合いの警備員である黄泉川に訓練をつけてくれるよう頼んだ。
最初は渋った彼女だったが、美琴の真剣な雰囲気に押されその頼みを了承したのだった。だが、数日としないうちに黄泉川はこの選択を後悔することになる。
(…痛々しすぎて、見てられないじゃんよ)
美琴の成長スピードは凄まじいの一言に尽きた。
美琴は戦闘において必要な多くの才能に恵まれた人物だ、また数多くの戦闘も経験してきており戦闘(あくまで殺し合いではない)ということに関して言えばそれなりに場馴れしている。そして上を目指す強い意志、それに加え今はなにか強い決意を秘めている。
それに加え訓練は擦り傷や打撲は当たり前、それでも怪我をものともせずに美琴は訓練を重ねていた。
これらの要素が絡み合った結果だろう、たった数週間で警備員の中で美琴の相手になるのは黄泉川を含め数名のみとなっていた。
(“鬼”を宿すとでもいえばいいのか?
そんな傷だらけになって……どうしてそこまでして強くなろうとする?
御坂…おまえはもう十分につよいじゃんか。こころも能力も体も。
そしていろんなものを護ってるじゃんか)
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