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おぢばにおかえり
第六十話 朝早くからその三十八

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「そういうことだったの、けれど詰所に泊まるとか」
「高校に入ってからです」
「それからなの」
「はい、中学までは遊びに帰る位でした」
「何時からおぢばに帰ってたの?」
「幼稚園の頃からですね」
 その頃からだというのです。
「大体」
「じゃあ結構馴染みあるわね」
「毎年一回は絶対に帰ってまして」
 それでというのです。
「奥華の詰所の近くのお好み屋さんにも」
「入ったの」
「それに彩華ラーメンも」
「定番ね、何かね」
「はい、本当におぢばは高校に入る前から馴染みの街です」
 こう私にお話してくれました。
「色々知っているつもりです」
「それは何よりね」
「そうですね」
「千里ちょっといい?」
 台所にいたお母さんから声がかかりました。
「手伝ってくれるかしら」
「お料理ね」
「ええ、いいかしら」
「じゃあ僕も」
「阿波野君はいいから」
 立ち上がろうとした阿波野君は止めました。
「お客さんだから」
「お客さんでもお手伝いしないと」
「今日はいいから」
 ちょっと強く言いました。
「休んでてね」
「どうしてもですか」
「そう、どうしてもよ」
 やっぱり強く言いました。
「そうしてね」
「じゃあここで待ってればいいんですね」
「そうするからね、お菓子でも食べててね」
「お菓子も充分頂きましたし」
 阿波野君が言う通り謙虚でした、今はじめて阿波野君の謙虚なところを見たので少し嬉しかったです。
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