第百十話 兄と弟その十
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「働いてもらうぞ」
「わかり申した」
「わしが家督を継げば」
その時はというのだ。
「まさにな」
「兄上の名代としてですな」
「存分に働いてもらう」
「そしてですな」
「伊達家の柱の一つとなってもらうぞ」
「片倉殿や時宗丸と同じく」
「まさにな」
「それでは」
小次郎も頷いた。
「そうさせて頂きます」
「頼むぞ、あと叔父上にはな」
「くれぐれもですな」
「用心せよ」
「兄上が出陣されて」
「留守にしておる間もな」
その時にというのだ。
「仕掛けて来てもな」
「そうしてきても」
「防ぐのじゃ」
「策を仕掛けられてきますか」
「おそらくな、兵は動かさずとも」
それでもというのだ。
「叔父上のことは知っておろう」
「はい、叔父上はです」
小次郎も知っていることだった。
「口ではいいことを言われますが」
「その実はな」
「含むものを持っておられ」
「そうしてな」
それでというのだ。
「策もな」
「使われますな」
「そうした御仁であるからな」
だからだというのだ。
「くれぐれもな」
「用心は、ですな」
「怠るな」
「留守を預かる」
「何かをされてはな」
その場合はというのだ。
「本末転倒じゃ」
「戦に勝とうとも」
「だからな」
「それがしは、ですな」
「わしが出陣しておる間はな」
その時はというのだ。
「何といってもな」
「はい、ですから」
「それでじゃ」
まさにというのだ。
「宜しく頼む、お主が出陣してじゃ」
「兄上が城におられても」
「その時もな」
まさにというのだ。
「わしはじゃ」
「叔父上に気をつけられて」
「守る」
城そして領地をというのだ。
「そうする」
「叔父上は厄介ですな」
「大崎家もであるがな」
「叔父上、最上家は」
「尚更じゃ」
まさにというのだ。
「だからじゃ」
「それ故に」
「くれぐれもな」
「気をつけまする」
「その様にな、後な」
政宗は弟にさらに話した。
「お主茶は好きか」
「茶ですか」
「茶道であるが」
「茶道といいますと」
「うむ、上方で最近流行っておってな」
「茶を飲むのですか」
「それじゃ」
まさにというのだ。
「それをな、今度は」
「我等もですか」
「しようと思っておる」
「そうですか」
「うむ、それで茶室をもうけてな」
そしてというのだ。
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