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戦国異伝供書
第百十話 兄と弟その七

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「そうしていこうぞ」
「はい、ではそれがしは」
「お主はこれからわしの名代としてな」
「何かあればですな」
「働いてもらう」
 小次郎に対して話した。
「よいな」
「それでは」
「そしてじゃ」
 政宗は弟にさらに話した。
「わしはもうすぐ初陣じゃ」
「いよいよですか」
「相馬家とのいくさにな」
 それにというのだ。
「出てな」
「それで、ですか」
「戦うが」
「では相馬家に奪われた地を」
「奪い返す」
「その為の戦ですな」
「そうじゃ、祖父殿が奪われた地をな」
 祖父晴宗がというのだ。
「奪い返す」
「そうですか、ですが」
「相馬家にはじゃな」
「五家がです」
 この家々がというのだ。
「つくやも知れませぬな」
「当家の敵であるな」
「はい、あの家々が」
「二階堂、結城、石川にな」
「芦名家にですな」
「佐竹家じゃ」
 常陸のこの家の名も出した。
「合わせて五つの家じゃ」
「その家々ともですな」
「争うことなるやもな」
「だとすれば厄介な戦になりますな」
「何ということはない」
 政宗は小次郎に笑って話した。
「一切な」
「それは何故でしょうか」
「まず相馬家の家臣をこちらに引き入れる」
「誘いをかけますか」
「それで力を削ぎ」
 相馬家のそれをというのだ。
「そしてな」
「そのうえで、ですか」
「そしてじゃ」 
 それでというのだ。
「父上ともお話しておるが岩城家に程よいところでな」
「仲裁をですか」
「頼んでな」
 政宗から見れば従兄弟であるこの家の主岩城常隆に、というのだ。
「程よいところで手を結ぶ」
「そうしますか」
「そう考えておる」
「また広くお考えですな」
「戦に勝つのはものを得る為であるな」
 政宗は小次郎に問うた。
「左様であるな」
「はい、それは」
 小次郎も頷いて応えた。
「まさに」
「勝って得たものを保つ為にはな」
「そうした外の政もですか」
「それもじゃ」
 まさにというのだ。
「行ってな」
「そしてですか」
「そのうえでな」
 まさにというのだ。
「ことをじゃ」
「進めていくものですか」
「そう考えるからな」
 だからだというのだ。
「わしもな」
「そうされますか」
「そしてな」
「兄上の初陣は、ですか」
「勝ってじゃ」
 そしてというのだ。
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