第二百八十九話
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第二百八十九話 先生達の欲
今日子先生は自分の家に遊びに来て一緒に紅茶を楽しんでいる今田先生に対して不意にこんなことを言った。
「香織ちゃん付き合ってる人いなかったわね」
「ええ、ずっとね」
今田先生はすぐに答えた。
「いなかったわ」
「私もよ、何かね」
「私達ってそうしたことはね」
「縁がないわね」
「男の人と付き合うことは」
このことはというのだ。
「本当にね」
「縁がなくてね」
「そうしたいってね」
「思うこともないわね」
「そうよね」
「同性愛はないけれど」
そちらの趣味はとだ、今日子先生も言う。
「けれどね」
「男の人とお付き合いしてね」
「結婚して」
そしてというのだ。
「それでね」
「ずっと一緒にいてね」
「満足しているから」
それでというのだ。
「これといってもてたいとか」
「そういう気持ちはね」
「なくて」
こう今田先生に話した。
「ずっとやっていってるわね」
「今日子ちゃんもてたわね」
「香織ちゃんもね、けれど」
どうにもというのだ。
「もてたいとか」
「そう思うことはなくて」
「ずっと生きていってるわね」
「旦那様がいたら」
「いいわね」
「というか沢山の人にもてたいとか」
「それっていいのかしら」
今日子先生は首を傾げさせつつ言った。
「いいっていう人いるけれど」
「別にもてなくてもね」
「困ることないと思うけれど」
「本当にね」
「そうした気持ちはないわよね」
「私達にはね」
こうしたことを話しながらお茶を飲む、そしてお菓子も食べた。先生達はもてるよりもこちらの方に欲があった。
第二百八十九話 完
2020・8・16
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