第四章
[8]前話
「そのうち捕まるかもな」
「そうね、そんな悪い人ならな」
「あれで実はあまり頭がよくないんだ」
「そうなの」
「徹底して自分に甘くてな」
それでというのだ。
「胡散臭い組合の責任者を親とか言ってる様なな」
「そんな人なのね」
「だからな、若しかしたらな」
「捕まるかも知れないのね」
「というかすぐに捕まって欲しいよ」
是非にという言葉だった。
「あの人は」
「そうなったらいいわね」
妻は夫の言葉に頷いた、そうした話をしていると。
夫の願いは適った、逵本は汚職や脱税、選挙での不正行為、収賄等の罪に問われて逮捕されたのだ。そうなってだった。
父は息子にこう言った。
「悪い人はああしてな」
「捕まるんだね」
「そうなるんだ」
こう話した。
「ああしてな」
「お婆さんを裏切ってジョンを捨てて」
「そんなことをしてな」
そしてというのだ。
「他には悪いことを一杯してな」
「捕まったんだね」
「そうだ、だから悪いことをしたらな」
「ああして捕まるんだね」
「そしていいことをしたらな」
父は今度はそちらの話をした。
「いいことが返ってくるんだ」
「そうなの」
「ジョンを見るんだ」
父は息子に笑顔で話した。
「ずっと義信の友達でいるだろ」
「うん、ジョンいつも僕を見たら嬉しそうだよ」
「お前がジョンを助けたからな」
それでというのだ。
「ジョンはお前に懐いているんだ」
「そうなんだね」
「絶対にああした人にはなるんじゃない」
逵本の様な人間にはというのだ。
「いいことをしていくんだ、そうしたらな」
「いいことが返って来るんだね」
「そうだぞ、じゃあこれからジョンの散歩に行くか」
「うん、じゃあジョン行こう」
「ワンッ」
ジョンは父の言葉に頷いた義信に声をかけられて鳴いて応えた、そうしてだった。
二人と一緒に散歩に出た、いつもご飯と水を沢山食べてブラッシングをしてもらって散歩をしている彼はすっかり元気になって奇麗になっていた。そして義信にへっへっ、と明るい調子で懐き彼にリードを持ってもらって楽しく散歩に出た。
お婆さんを裏切った親戚の末路 完
２０２０・１０・２５
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