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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第55話:本当の歌
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透が二課に合流しようと言っていた理由を、ジェネシスと戦う上で必要な事だからだと思っていた。だがこうして響達と仲間としての一体感を感じて、それだけではない事に気付いた。
透はクリスにもっと友好関係を広げ、彼女の中の世界を広げてもらおうとしていたのだ。それがクリスの心を豊かにし、彼女にいい影響を与えると確信していたから。
戦場の直中であると言うのに、穏やかな雰囲気がその場に流れる。
それを引き裂こうと襲い掛かるノイズ。しかし無粋なノイズは、東野村を送り届け戻ってきた透により全て叩き落された。
クリス達に襲い掛かろうとしていたノイズを排除した透は、流れる様にクリスの近くに降り立った。そこで彼は響・奏と自然な様子で手を繋いでいる様子を見て、仮面の奥で嬉しそうに笑みを浮かべた。
「さて、仲直りも終わったところで……あのデカ物をどうするか」
手を離し、アームドギアを肩に担ぎながら奏は上空を悠々と飛ぶ大型ノイズを見上げた。あれを何とかしない限り雑魚ノイズが幾らでも出てきてしまう。
「そう言う事ならあたしに任せな!」
どうやって大型ノイズを倒すかという事で頭を悩ませる奏達だったが、クリスの言葉に全員の視線が集中した。
「イチイバルの特性は長射程広域攻撃……派手にぶっ放してやるよ!!」
「まさか、絶唱を!?」
「ばぁか、あたしの命は安物じゃねぇ!」
「ならどうするつもりだ?」
首を傾げる奏達の隣で、透はカリヴァイオリンを取り出し演奏の構えを取った。彼は既にクリスがやろうとしている事を理解しているのだ。
「ギアの出力を限界まで高めて放出を抑える。それを透の演奏で増幅して、臨界にまで溜め込んだエネルギーを一気に放出して纏めて吹っ飛ばしてやるよ!」
「あぁ、前の絶唱擬きみたいな奴か」
最初にクリス達と対峙した時の事を思い出す。あの時は訳も分からず一方的にやられてしまったが、それが味方に回るとこうも心強いとは。
「だがチャージ中は丸裸も同然」
「前と違って邪魔してくる奴は無数のノイズ。ある程度動けても対処が間に合うとは思えない」
「なら、私達がクリスちゃん達を守れば良いだけの事!!」
3人は頷き合うと、一斉に散開してそれぞれクリスと透に近付こうとするノイズを優先的に攻撃していく。2人に全面の信頼を置いて行動する奏達に、クリスは一瞬呆気に取られながらも透の演奏に我に返るとチャージの為に歌い始めた。
──透以外の奴に背中を預けるなんて……って思ってたけど──
実際にやってみると存外悪くない。今まで自分の味方は透だけと決めつけて他者との接触を避けていたが、それが間違いだと気付かされた。その事を恥じるよりも、心地良さに思わずクリスは歌いながら笑みを浮かべていた。
──
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