第二章
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「やっぱりな」
「ええ、シフォン注射嫌いよね」
母も言った。
「本当に」
「ああ、いつもこうだよな」
「注射の時はね」
「そうだな、けれどな」
「ちゃんとしておかないとね」
狂犬病の注射はというのだ。
「このことは」
「さもないと危ないからな」
「狂犬病は怖いから」
「病菌も嫌いでな」
シフォンはこちらも怖がっているのだ。
「いつも行きたくない顔するよな」
「ええ、けれどね」
「連れて行かないとな」
「そうよね」
「クゥン・・・・・・」
だがシフォンは怖がったままだ、二人もその彼女を見て困っていた。だがここで里奈が来てそうしてだった。
シフォンにここでも優しい声をかけた。
「シフォン、私がいるから」
「ワン?」
「だから大丈夫だよ」
こう言うのだった。
「安心してね」
「ワン・・・・・・」
「行こう、お父さん」
里奈は今度は父に顔を向けた。
「それでね」
「シフォンに注射してもらうか」
「絶対にしないといけないよね」
「ああ、狂犬病の注射はな」
このことはとだ、父は答えた。
「どうしてもな」
「しないといけないよね」
「そうなんだよ」
「じゃあ行こう」
里奈はまたシフォンに声をかけた。
「私が一緒だから大丈夫よ」
「ワン・・・・・・」
シフォンはそれならという顔になった、それでだった。
まだ怖がっているが父そして里奈と一緒に注射が行われる場所に行った、その注射の時も怖がっていたが。
里奈がずっと傍にいたので落ち着いていた、それで無事に注射は済んだ。
この時以外にも里奈はシフォンといつも一緒にいた、特に困っている時は。両親はそんな娘を見て言った。
「里奈がいてくれてな」
「ええ、シフォンもね」
「幸せだな」
「そうよね、私達の娘だけれど」
それでもというのだ。
「物凄く優しいわね」
「そうだよな」
「あそこまで優しくなるなんて」
それでというのだ。
「思わなかったわ」
「そうだよな」
「けれどその優しさがね」
「シフォンを助けてくれているな」
「いつも傍にいるから」
「特に困っている時に」
「だから里奈はあのままね」
まさに今の様にというのだ。
「ずっと」
「あの優しさを持っていて欲しいな」
「そうよね、それでね」
「誰よりも優しい人になって欲しいな」
「そう思うわ」
笑顔で言ってだ、そしてだった。
二人は娘達、里奈とシフォンを優しい目で見た。その優しい目から放たれている光が二人を育んでいることは気付いていなかった。
里奈は成長すると天理教の教会に嫁いだ、そうしてしっかりしていて誰よりも優しい女性として誰からも慕われた。こんなにいい人はいないとまで言われた。
犬への思いやり
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