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犬に酒は
第三章

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「玄関で迎えてくれたけれどな」
「それで少し遊んでたわね」
「今は何処なんだ?」
「あそこにいるわよ」
 妹はソファーのところを指差した、すると。
 ココアはそこにいて丸くなっていた、その彼を指差して言うのだった。
「寝てるわよ」
「ああ、そこにいたんだな」
「ええ、ただね」
 妹はこうも言った。
「ココアの毛ってソファーと同じ色だから」
「わかりにくいよな」
「そうなのよね」
「俺がココアって名付けたけれどな」
「ココアの色そのままだからね」
「そうしたんだけれどな」
「そうよね、ただ犬にはココアっていうかカカオもね」
 これもというのだ。
「禁物だから」
「毒になるんだな」
「そう、あと玉葱もね」
 この野菜もというのだ。
「駄目よ、葱もね」
「駄目なものが多いんだな」
「そうなのよ」
 こう兄に話した。
「だからね」
「気をつけてだよな」
「あげないとね」
「駄目なんだな」
「何でもじゃないから」
 何でも食べられない、飲めないというのだ。
「人間と違ってね、人間だって駄目なものあるでしょ」
「ああ、食えないものあるな」
「飲めないものもね」
「そういうことだな」
「そうしたこともわかって」
「犬とも暮らしていかないと駄目か」
「そうよ、じゃあ私これ飲んだら歯を磨いて寝るから」
 また飲みつつの言葉だった。
「お兄ちゃんはこれからどうするの?」
「食ったらお風呂入ってな」
「そうしてなの」
「寝るな」
「寝る前には歯磨き忘れないでね」
「さもないと虫歯になるからな」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「ちゃんと歯を磨いて寝てね」
「そうするな」
 兄は妹の言葉に頷いた、そうしてだった。
 晩酌のビールを飲んだ、それは人間である彼にとっては実に美味いものだった。


犬に酒は   完


                 2020・10・24
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