第二章
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「保護犬や保護猫引き取れなくて」
「結果としてですよね」
「引き取り手いなくてこの子みたいに」
「そうなりますね」
「世の中結婚してサラリーマンとか公務員だけじゃないですよ」
「派遣の人も駄目で」
「なら余計にですよ」
条件として厳し過ぎるというのだ。
「本当に」
「そこは緩やかにしないと」
「この子みたいな子これからも出て来ますよ」
その優しそうな犬を見て言う。
「この子はいい子なのに」
「元々飼い犬で」
「そうだったんですか」
「名前はルッツって言いまして。元の飼い主の方がお亡くなりになって」
そうしてというのだ。
「それで、です」
「ここに連れて来られたんですね」
「そうでしたが」
「そうですか、引き取り手がいても」
「本当に条件がです」
それがというのだ。
「そういうことで」
「ですか、じゃあ今から」
「お願い出来ますか」
「これ打ったら苦しまずに眠ってですから」
佐古下は注射を出した、そこに薬を入れつつ話した。
「せめてです」
「安楽死ですね」
「そうなります」
「ではお願いします」
「はい、これも仕事ですからね」
幾ら望まないものでもというのだ。
「そうさせてもらいます」
「それじゃあ」
「はい、今から」
こうしてだった。
佐古下はその犬ルッツに注射を打った、後は眠るのを待つだけだった。佐古下は注射してからも苦い顔だった。
そして自分の病院に戻ったが翌日優香から連絡を受けて驚きの声をあげた。
「今からそっちに行っていいですか」
「病院の方は」
「今は休憩時間ですから」
それでというのだ。
「そちらに行く時間はあります」
「それでは」
「はい、今からそっちに向かいます」
「わかりました」
こうしてだった、佐古下はこの日も施設に行った、そしてだった。
施設に入るとあらためて驚いた、何と。
昨日注射、安楽死の薬を打ったルッツが生きていたのだ、それも元気だった。
「ワンッ」
「元気ですね」
佐古下は思わず言った。
「この子」
「こんなことははじめてです」
優香も驚きを隠せない顔で言ってきた。
「私も」
「そうですよね」
「あの、本当に」
「どうして生きているのか」
「不思議です」
佐古下はこうも言った。
「薬は間違いなくです」
「効きましたか」
「はい」
間違いないというのだ。
「眠りましたし」
「あのままですね」
「死ぬ筈なんですが」
「それが、ですよね」
「私もこんなことははじめてです」
佐古下は優香に言った。
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