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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の1:誰の油断か
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ある奴建てちゃうの。もう屋敷ですよね、これ?」
「知らんわ、あいつらに聞け」
「了解です。んじゃ、裏口探しますか」

 森の影に潜みながら二人は周辺を歩いていく。色も見えぬ森を音を無碍に立てぬよう注意を払い、時には小さな虫を避ける。少し下り坂となった所から木々の間を抜け、窪地のように凹んだ地面を歩き、再び上り坂となっていく最中、慧卓はそれを見つけた。
 分かりやすいまでの裏口である。それは建物の丁度裏側、窪地に面するように置かれており、歩哨が一人立っているようであった。

「・・・だから、わかり易い真似すんなっての・・・」
「全くだ。あいつは任せろ」

 ユミルは中腰になりながら僅かに歩き、丁度良い場所に膝を立てて、弓を横に構えながら矢を番えた。森の闇は深いものだ。2〜30メートルしか離れていないといえども、歩哨の視界はただ只管に暗いだけであった。ユミルの側から言えば全く逆なのだが。
 ユミルは弦をゆっくりと引き、限界まで引く。そしてその時となって、ひうと、矢を射る。歩哨が高調子に気付いた頃にはもう手遅れであり、矢は寸分違えず歩哨の喉を射抜いた。

「っっぁ・・・ぁぁっ・・・」

 声にならぬ悲鳴が血の奔騰に飲み込まれ、歩哨は喉を押さえようと手をやりつつ、膝を突いた。二つ目の高調子が頭頂部を射抜き、歩哨は前のめりに倒れこむ。真見事な射術であった。

「・・・御見事です」
「こういう荒仕事はお前にはまだ任せられんからな。・・・兎も角、早い内に見付けよう。夜が更けてしまっては帰りが危険だ」
「そうですね、じゃぁ、先導をお願いしてもいいですか?」
「ちゃんと着いてこいよ?」

 ユミルは用済みとなった弓矢を木の傍らに置くと、建物の方を警戒しながら進んでいく。慧卓がその後に続いて裏口に入っていった。中は篝火すら無く、外界よりも更に暗い。慧卓は地面の何かに躓いて咄嗟に壁に手を突くも、足首あたりにつんと刺さるものに表情を歪めた。 

「いいっつぅ・・・」
「大丈夫か?」
「え、ええ・・・うわぁ、骨だよ・・・」
「・・・真新しいな。血肉が残っている」

 足首のそれを手触りで確かめると、それが血肉が付着した骨だと漸く分かった。慧卓はつま先でそれを蹴ると、意外にも重たい感覚がした。どうにも一部分だけというわけではなく、全体が捨てられているらしい。ユミルが鋭い視線でそれを観察しているのに気付いて、慧卓は話し掛ける。

「どうして此処に骸があるんでしょうね。此処って裏口への通路でしょう?そんな所に人骨を捨てる意味ってありますか?出入りの邪魔になるだけでしょう?」
「・・・まぁ、そうでもあるが」
「なんです?言いよどんだりして」
「お前には見えにいかもしれんが、お前の足元に男の死体が捨ててあるぞ」
「うぇっ!?
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