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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の1:誰の油断か
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な笑みを浮かべ、瞳を閉じる。そして項垂れるように枕に体重を乗せて、目元を隠した。リタが驚いたように目を開く。 

「っ!」
「落ち着いて下さい。疲れて、眠ってしまっただけです」
「・・・もう目が覚めるかは分からないんですよ?」
「そうかもしれません・・・でも今は、彼女との約束を叶えなくちゃ。そうでなきゃ彼女が報われません。・・・アリッサさん達を説得しに行きましょう。あの人だって、この惨状に怒りを覚えている筈です」
「・・・そうですね。御免なさい、勝手な約束を結んでしまって」
「いえ、俺だってしてたかもしれませんよ」

 慧卓はリタを立たせて、寝台の女性を一つ見遣って天幕を出て行く。リタも女性を静かに見詰めつつも、己の為すべき事を見定めると、天幕を出ていった。 
 


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です。あの人の言葉を信じれば、盗賊はこっちの方に居を構えています。奴等を探すなんて、難しい訳ありませんって」
「いや、そうじゃなくてだな・・・おい、目の前の木の根元に毒花が咲いてるぞ」
「・・・触ったらどうなりますか?」
「炎症を起こして、最悪、腐る」
「よ、避けましょうか」

 夜の帳が落ちた頃。村からは大分離れた所まで歩いてきた。漆黒にも近き森の中を勇敢にも進み、慧卓とユミルは歩いていく。昼間は秋にも近き気温でもあったのが、夜では完全に降霜のものである。暗く冷たい森を歩くというのは非常に辛い行動である。しかしそれに、友の家族を救出するためという目的と意思が加われば、その行為は全く苦にならないものであった。
 アリッサ達を説得し、馬車が消えた方角を轍から推測し、後は勘だけを頼りに慧卓は歩いていく。ユミルの苦情をまともに受けれる気持ちではなかった。

「前々から思っていたが、お前のその危機意識の無さが心配なんだ。お前は調停官の補佐役なんだぞ?もう少し他人に信用を置くかどうか熟慮したって、損はしないと思うのだが」
「考えるのは、時と場合によります。病弱な方の言葉を疑うような真似はしません。あの人の言葉は疑いようのないものだって聞こえましたから」
「そうかもしれん。だが一応の疑いは持つべきだ。それが補佐官としての義務であり、責務なのだ。お前はまだ若いからしれんから、職務に対する意識がーーー」
「あ、見えましたよ。あれじゃないですか?」
「・・・はぁ」

 ユミルは溜息を吐きながら肩に弓を掛け直し、慧卓の隣に立ち、半ば呆れにも近い表情でそれを見遣った。地方の豪族の別荘の如き、異様に体裁の良い建物を。獣除けの篝火のお陰でその全貌がかなりはっきりとわかってしまう。

「あからさまに怪しいな」
「居住性求め過ぎなのが余計に可笑しい。なんでこんなに雰囲気
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