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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の1:誰の油断か
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だけであった。それがいけなかったのかベルは更に目を爛々とさせて、勢いのままに男を刎ね飛ばした。 

「ぶふぉっ!!」

 胸部の辺りを強烈に蹴り飛ばされ男は吹っ飛び、廃墟に身体を打ちつけ、降り注いだ木片が男の頭を幾度も叩く。白目を剥いて男は気を失い、力無く弓を手放していた。尚もいきり立つベルをどうにか諌めようと、慧卓は馬上で挌闘し、声にもならぬ悲鳴を漏らしていた。
 背後からユミルが近寄っていき、いきり立つベルに声を掛けた。

「・・・・・・あー、うん。良くやったぞ、お前」
「なんでもいいんでっ、ちょっと抑えてくれます!?首攣りそうっ!!!」
「全く・・・」

 ユミルは頭を振りながらベルの肌を何度も撫でて、その興奮を和らげさせていく。徐々に静まっていくベルの気に、慧卓は安堵の溜息を零した。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 黒い煙の中からばちりと火が弾け、積み重なった遺骸に燃え移る。元々が黒く燻っていたものも、身体が欠けていたものも全てまとめるように炎が盛り、黒煙を捲し上げる。廃村の中央で炊かれた弔いの炎を見ながらアリッサは、傍で手から穢れを払っているキーラの言葉を聞く。

「これで全部ですか?」
「ああ、そうだがな・・・キーラ、何も此処まで手伝って貰わなくても良かったのだぞ?」
「アリッサ様。私がそうしたかったから、したいんです。唯の家事手伝いの足手まといでいては、とても心苦しいですから」
「・・・感謝する、お陰で助かった」
「はいっ」

 血と死の汚れをまといながら溌剌と笑うキーラに当てられ、アリッサは小さく笑みを返すだけに留まった。なんとなしな罪悪感を抱きながら赤い弔炎を見詰め、無言のままに感慨に更ける。
 彼女達から離れた所では兵士や従士、或いは御者達も含めて、地面に散らかった乱の後を片付けいる。誰も彼も手を休めず、元の村の平穏を取り戻そうとしていた。一方で一軒の廃屋の近くでは、パウリナが蒼い顔で蹲っており、ユミルが何度もその背を撫でていた。

「・・・慣れないか、まだ?」
「当たり前ですよ、こんな惨い光景に臭い、何時まで経っても慣れません・・・でも此処で吐くのは我慢します」
「・・・そうか」
「でも寝る前にまとめて全部出します」
「寝れなくなるからやめろ、馬鹿」

 再び咳き込み始めたパウリナを慰めつつ、ユミルは柔らかな表情で彼女の精神の成長を見守った。彼女にとっての幸いとは、己の心身の安定に努める余り、兵士等の残酷な会話に聞く耳を持てないという事だ。

「あれ、全部男らしいぜ?ユミル殿が言ってたぞ」
「・・・婦女に子供は、いないのか。厭な気持ちになるな」
「本当だよ・・・。さぁ、さっさと済ませよう」
「ああ」

 無意識な嫌味な会話に
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