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王道を走れば:幻想にて
第四章、その3の1:誰の油断か
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開け放つ。正面最奥の壁に、薄汚れた服をした一人の少年が横たわっている。食事の残りが入った木皿が傍に置いてあった。
 ユミルはのしのしと近付いていく。そして少年の容姿が、金髪碧眼と頬の黒子である事を確認した。少年は目を擦りながら覚醒し、そして困惑と驚きで言う。

「・・・えっ・・・誰?」
「リコだな?地図の製作が生業の」
「え?そ、そうですけど・・・」
「此処から逃げるぞ、さっさと立て!!」
「ま、待って下さいっ!足にロープが掛かってていて、部屋から出れないんです!」
「!じっとしていろよ」

 ロープは窓格子の一本に掛かっているようである。但しその格子は高い所にあるだけで、脆そうな木製であった。ユミルは軽く背を伸ばすとその格子を両手で掴み、膂力で以てそれを引っ張り、二つに折った。

「よしっ、これで大丈ーーー」
「動くな、糞野郎」
「・・・くそったれ」

 鋭い視線をして入り口の方を向くと、この騒ぎに気付いたであろう賊が、慧卓に剣を突き付けてユミルに殺意を向けていた。武器も持たぬ慧卓は抗する術無く捕虜となったに違いない。形勢が完全に賊側に傾き、これまでの苦労と殺傷は意味の無いものとなってしまった。

「お前、案外使えない奴だったんだな」
「・・・すみません」
「いいか、二人とも黙れ。喋ったりしたら爪全部剥がすからな」
「なんだってー」
「黙れ、クソガキ!!!今日はもう眠いし、機嫌が悪いんだ。お前ら、変な気を起こすんじゃないぞ」
「・・・従おう」
「・・・・・・はぁ」

 恨むような視線から目を逸らしつつ、慧卓はこれからどうすべきか、どのようにこの失態を拭うべきか考え始める。賊相手に良識が通じるか賭ける気にはなれず、慧卓はただ恥を知るように下を向いていた。 


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