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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の3:疑わしきそれ
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正常で本気だ!!私はずっとこれを追い求めていたのだぞ?ははっ、三者の内二つが揃えば、不完全とはいえ強力な力を行使する事が出来よう!そうなれば、王国は・・・」
「滅ぶ、か?」
「変わるんだ、イル殿!王には三つの獣の道具を制御出来なかったようだが、私は違う!改革の心を持つ私がたかが道具の二つや三つ如きに屈する筈がない!!」

 演説を打ちながら見開かれたチェスターの目に写る一種の狂的な光。イルは一つ思う。ひょっとしたら他者から見たら演説中の己もあのような姿と見えてしまっているのではないかと。而してそれを肯定しては以後の政治活動に拭う事の出来ない疑問符がついてしまうため、その感想は直ぐに立ち消えとなった。
 アダンは散々に話を聞かされては居るものの、如何にも信用がならぬ様子であり、一つ頸を捻ってからイルに尋ねた。

「おい、今のはマジ話なんだろうな?」
「あ、ああ。一応数百年前の実話であるらしいと、祖母より教わったのだが・・・」
「ちっ、語り継いだだけじゃ論証にもなっていねぇ。物証ってのが欲しいね」
「だから私は知らんぞ?こんな与太話、金があると聞かなければそもそも協力など・・・」
「あ''ァっ?」

 荒げた反応にイルは一瞬怯え、すぐさま視線を外した。アダンはそれに小さく溜息を吐いていると、チェスターは今にも待ちきれないとばかりにイルに問う。

「イル殿、遺跡にはどうやって行ける?今直ぐにでも行きたいのだが」
「・・・北西の山道から、白の峰を越えれば行ける。だが今は駄目だ」
「何故かな?」
「・・・行きの途中に大きな川がある。水深もあって幅が大きい。橋を架けるよりも凍るのを待つ方が安上がりで、安全だろう。行けるとするならば三ヶ月後、降霜の月だ。
 ・・・余談だがな、行きだけで一月は掛かるぞ。北の風土に慣れていない上に霊峰を越えようとするなど、自殺行為だ」

 俄かな優越心を滲ませながらイルは言う。自らの風土を誇るエルフらしい発言である。チェスターはそれを分かり切っているかのように鼻を鳴らし、床に落ちている二つの袋をテーブルに置いた、中身をぶちまけた。燦燦とした金の光沢を放つ、大量の金貨が其処に転がり、床にばらばらと落ちていった。暗い部屋の中で篝火に照らされた金貨は、一縷の儚さを伴って輝く。

「10万モルガンだ。先行投資だと思って、有用に活用して欲しい」
「・・・どうやってこんな大金を?」
「態々聞くのかな、そういうのを?」
「・・・・・・いや、有り難く受け取ろう」

 小さな動揺を覆い隠して、イルは金貨の一枚を摘み上げた。古の知識を集積した部屋の中においては、いたく無粋な冷たさと重みであった。チェスターは鋭く言う。

「分かっているね、イル殿?貴方の理想も素晴らしきものであるがな、我等の安全が第一に優
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