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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の3:疑わしきそれ
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あり、その端が床に落ちる頃となって、チェスターは目を細めて読み進める手を止めた。彼が見るのは、一人の老人の遺骸の絵であった。チェスターはその老人を、正確には老人の周りに描かれた物を食い入るように見詰めた。赤い義眼に、黒い杖、そして紫の首飾り。

「・・・これは義眼か?それに錫杖、首飾り・・・。もしや、この遺骸は狂王なのか?これらが揃えば・・・」
「錫杖?・・・ああ、ヴォレンドの錫杖の事かな?」
「ヴォレンド?なんの事かな、イル殿?」
「古代遺跡の事だ。ここから帝国領に向かって進み、白の峰を越えるのだ。そこに石造りの大きな遺跡がある」
「錫杖との関係は?」
「その赤い帯の本を見てほしい。我等が昔より語継ぐ、古い伝説だ」

 チェスターはテーブルの端に乗っかっていたぼろぼろの薄い本を開く。劣化により頁が黄ばんでおり、紙の端が所々千切れたり皺くちゃとなっているが、幸いにも内容を理解するのに難を来す事は無い。昔話の如くもったいぶった長い文章であるが、チェスターは必要な部分のみ読了していった。

「伝説にちなんで、我等はそれをヴォレンドの錫杖と呼ぶのだ、チェスター殿」
「何て書いてあるんだよ?」
「・・・こう始まる。『王の末期を知る者少なく、語る者は尚少なし。王はヴォレンドに座し、魔の獣と親睦を結んで狂疾に身を窶し、多くの者の狂う様を観覧された』」
「一応聞くけどよ、教会で教わったのと違う内容か?」
「始まりは一緒だが・・・待て、ここからは違うな」

 二・三の頁を捲ってからそう答えて、再びチェスターは語っていく。

「『王は親睦の証に左目を失くし、その瞳に紅の炎を集めた。瞳の光によって狂乱を好み、力を欲した王は更なる契約を結び、獣より黒い杖を授かり、宝飾に誘惑の呪いを篭めた。三つの力により王の治世は秩序に保ち、民草は生贄の祠に葬られた。
 二十年の栄華の後、王は病に倒れ、石の台に身を伏した。そして臣下の者に、我が末期に相応しき生贄を捧げよと命じ、獣の像に杖を授けた。臣下は恐怖して王を屠り、石の都より民草を逃がし、自らも暗き峰に消えて行った。
 誘惑の首飾りは臣下の一人が持ち去り、破壊の旅路へと赴いた。さりとて我は感ずる。王の呪いは未だ解けてはいないと』」

 長々とした言葉は途切れ、どこか感動したような面持ちでチェスターは本の表紙を見詰めた。一方でアダンは話の内容をまじまじと聞き取り、露骨に眉を潜ませながら、真摯なまでに解答する。

「聞く限り、とんでもない王様だな、そいつは」
「そんな事はどうでもいい!これで確証が取れた。義眼と錫杖はまだヴォレンド遺跡にある!取り去られたのが首飾りだけというのが何よりの証拠!」
「・・・大丈夫か、チェスター?そいつはただの伝説だぜ?」
「何を聞いているんだ、アダン殿?私は常に
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