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王道を走れば:幻想にて
第四章、その2の3:疑わしきそれ
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を舞わせた。
 その光景を眉を顰めながら見つつ、老人、イル=フードは好奇心と欲望から問いかけた。

「チェスター殿、聞いても宜しいかな?」
「何かな?」
「貴方が探している狂王の義眼・・・どのような価値が秘められていると?」
「・・・貴方が望むような力ではない、という事は確かだ。言葉巧みに大衆を扇動し、彼らの心を掴み取る。そんな力は私の知る限り、義眼にはない」
「・・・そうか、それは残念だ」

 残念がるように呟くイルを無視して、チェスターはぺらぺらと茶褐色の頁を捲っていく。速読でありミミズのような文字であるが、教会で得た博識によってその解読は容易であった。アダンは既に退屈を覚えたのか、乱雑に本を投げながら言う。

「そんなに狂王の遺物ってのは大事なのかい、チェスター?」
「当然だ。教会に入った時、真っ先に教わったのが狂王の伝説だ。人の業と本質を徹底的に叩き込み、信者の思想を束縛するのが奴等のやり手だった。・・・もっとも狂王の伝説など、王の凄惨さばかりしか強調されなったからな。他に大事な部分があったとは、つい最近まで知らなかった」
「質問に答えろよー」
「・・・『セラム』の歴史上、最も強大で、最も残虐な王だ。彼個人に特別な力は無いが、彼が持つ三つの獣の道具は強大な力を誇ったと謂われている」
「伝説なのに、なんで分かるんだよ?」
「伝説ではない、史実だ。嘗て本当に存在していた王なのだ。文献にも載っている!」
「・・・今一信用ならないんだよなぁ、そういう作り話は特に」

 ぶつぶつと言あうアダンを横目で睨むも、彼の愚痴も仕方の無い事であった。盗賊である以上教養があるとは必ずしも謂えず、ましてや彼が住むのは現ナマが物を言う世界である。古ぼけた本一冊の知識で彼の価値観が変わるとは到底思えなかったのが、チェスターの無礼な本心であった。
 持っていた本をテーブルに置いて次の本を取る。流れるように文字の羅列を睨み、その意味を解していく。

「・・・・・・それに、どうやら義眼単独では効果を発揮しないようだな」
「へぇ、そうなのかよ?」
「そのようだ。文献を見るに、セットアイテムの一つと書かれている。おそらく三つの獣の道具の事だろう。義眼だけあっても駄目なようだ」
「それにしちゃぁ、随分とやばい見た目をしているな?人を狂わすような感じがしてくるぜ、こいつは」

 アダンが遊ぶような手付きで、本を見開きのままチェスターに手渡す。赤く燃え盛る目が稲光を伴って、痩せ細った女性を鈍光の針山へと突き落とす絵図であり、チェスターは嫌悪の表情を浮かべた。

「・・・余り長い間見るものじゃないな。アダン殿、その巻物を」
「ああ」

 代わりに手渡された巻物をばっと広げて読み進める。それは他のものと比較すると幾分か厚みのあるもので
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