第四章
[8]前話
「さもないと警察呼びますよ」
「くっ・・・・・・」
警察と聞いてだ、男は。
苦い顔になって引き下がった、まどかはその様子を見てあかねにまた言った。
「言った通りでしょ、警察って聞いたら逃げたでしょ」
「警察と聞いて逃げるなら」
「言うまでもないでしょ」
「ええ」
あかねもそれはわかった。
「そのことはね」
「そう、間違いないわ」
「あの人は悪人ね」
「悪人も悪人」
それこそというのだ。
「極悪人でね」
「間違いないわね」
「これはね」
「だからね」
それでというのだ。
「よかったわ」
「若し私だけだと」
あかねはまどかと佐助を見て言った。
「危なかったわね」
「ええ、だからね」
「気をつけないと駄目ね」
二人でこう話した、すると。
佐助もここであかねの顔を見て鳴いた、あかねはその彼の顔と鳴き声の調子を聞いてまどかに言った。
「ひょっとして佐助もそうしろって言ってるのかしら」
「そう思うわ、本当にしっかりしなさいね」
「ええ、これからはね」
まどかはあらためて自分に誓った、そしてそれからは自分に近付いて来る人間に注意する様になった。その結果詐欺師の類には遭わなくなった。また後日彼女は自分の家に来たまどかに言われた。
「あのお店であかねに声かけてきた奴とんでもない奴だったみたいよ」
「そうだったの？」
「あの後私またあのお店に今度は一人で行ったけれど」
「その時にわかったの」
「ええ、あのお店の常連さんで表向きは会社員だったけれど」
「会社員にしては派手な人だったわね」
「その実悪質なアダルトビデオの撮影会社の社員で」
それでというのだ。
「女の人を騙して無理矢理撮影させて脅したりもする」
「そんな人だったの」
「そう、だから関わらなくてよかったわね」
「そんな人だったらね」
「他にも色々悪いことしていたらしくて」
「本当に極悪人だったの」
「だからね」
「関わらなくて正解だったわね」
あかねはこのことをあらためて思った、それで自分の傍にいた佐助にも言った。
「佐助もそう思うわね」
「ニャア」
佐助はその通りだと言わんばかりに強い鳴き声で応えた、そうして彼女の膝の上に来て丸くなった。あかねはその佐助を優しく抱いて微笑んだ。
猫が知らせるもの 完
２０２０・１０・２１
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