最終話 ただの勇者
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勇者』だ。違うか?」
「……えぇ、違いませんとも。愚問でしたな、ガウリカ様」
そんな彼女の気高さを目の当たりにした爺やも、呆れ返ったように苦笑している。そこで彼は、ようやく思い出したのだ。
この少女は、惚れた男に去られた程度で挫けるほど、柔な性格ではないのだと。例え相手が誰であっても、感謝の念を忘れるような人間ではないのだと。
「さぁ、行くぞ爺や。盗賊団に荒らされたオアシスの復興、流通の再開、冒険者達への依頼の斡旋……仕事は山ほどある。忙しくなるのはこれからだ!」
「……やれやれ、すっかり隠居する機会を逃してしまいましたな」
やがて、勇ましい足取りで歩み出すガウリカを追い。諦めたように笑みを零した爺やも、ゆっくりとその後に続いていく。
そして彼女達が去った後、慰霊碑に添えられた花は穏やかな夜風を浴びて――傍に立つ少年兵の墓標に、鎮魂の花弁を捧げていた。
◇
――私達が暮らすこの星から、遥か異次元の彼方に在る世界。
その異世界に渦巻く戦乱の渦中に、帝国勇者と呼ばれた男がいた。
人智を超越する膂力。生命力。剣技。
神に全てを齎されたその男は、並み居る敵を残らず斬り伏せ、戦場をその血で赤く染め上げたという。
如何なる武人も、如何なる武器も。彼の命を奪うことは叶わなかった。
しかし、戦が終わる時。
男は風のように行方をくらまし、表舞台からその姿を消した。
一騎当千。
その伝説だけを、彼らの世界に残して。
◇
――そして、この戦いからさらに三年後。王国の城下町を舞台に、最後の呪具に纏わる物語が幕を開ける。
伊達竜源の怨念を宿した、「勇者の剣」の物語が――。
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