◆外伝・四◆ 〜伏龍と美周嬢〜
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ずに言ってくれ」
「わかった」
周瑜さんの屋敷を辞去する間際に、私は呼び止められた。
「周瑜さん、何か?」
「……二つ、頼みがあってな」
「伺いましょう」
「一つは、先ほどの夢の事だ。あれは、私と雪蓮だけで交わした約束。余人には漏らさないで欲しいのだ、無論土方様にも」
「……はい。誓って」
「すまない。それから、もう一つだが。土方様にお礼を申し上げたいのだが、生憎私もそうそうこの地を離れる訳にはいかん。だから、書簡を渡して欲しいのだ」
「お安い御用です」
私の返事を聞くと、周瑜さんはふと遠くを見るような眼をした。
そして、
「冥琳だ」
と、短く言った。
「え?」
「真名だ。秘密を知られてしまったのだ、それを漏らさぬ約定として真名を預けたい」
「はわわ、い、いいんでしゅか?」
あうう、また噛んじゃったよ。
「ああ」
「……わ、わかりました。では、私の事も、朱里と呼んで下さい」
「わかった。改めて宜しくな、朱里」
そう言って、周瑜さんは右手を差し出す。
「え?」
「握手、というのであろう? 睡蓮様が土方様から教わったらしいが、親しい者同士の挨拶で行うものらしいのでな」
「あ、は、はい。じゃあ」
おずおずと私が差し出した右手。
冥琳さんは、しっかりと握り返してきた。
翌日から、華佗さんの治療が始まった。
冥琳さんも日中はお仕事だから、出来るのは夜だけ。
なので、一週間それは続いた。
……そして、見事に冥琳さんの病気は完治。
冥琳さんは勿論、それを知った孫策さんまで大喜びだった。
私はご主人様の命を全て果たして、ホッと一安心。
……でも、もし孫家が敵に回ったとしたら。
ご主人様は大変な人を治してしまった事になる。
そうならないよう、私が一層、努力するしかない。
だって、私はご主人様にお仕えする軍師なのだから。
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