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のろけっぱなし
第一章

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                のろけっぱなし
 三浦健司は黒髪を短くした穏やかな目の三十四歳のサラリーマンだ、面長の顔で色白で背は一七〇位ですらりとしている。
 その彼は最近何かと会社で言っていた。
「俺にも彼女が出来たんだよ」
「猫のですよね」
「ああ、こいつな」 
 後輩の三野正太郎、面長の顔で一七五程の背で筋肉質で濃い眉が印象的な彼に自分のスマホの画像を見せて話した。そこには銀色の毛で黒の虎毛の愛嬌のある顔立ちのアメリカンショートヘアがいる。
「ムーっていうけれどな」
「あれですよね、雄ですよね」
「雄だけれどな」
 それでもとだ、三浦は三野にさらに話した。
「凄く可愛いんだよ」
「それで彼女ですか」
「猫って彼女って感じするだろ」
「そうですか?」
「我儘でも可愛くてな」 
 それでというのだ。
「だからそう言うんだよ」
「そうですか、ですが」
 三野は三浦にさらに言った。
「先輩結婚してますよ」
「ああ、もう四年だよ」
「奥さんいるのにですか」
「浮気してるな、俺」
「そうですよね」
「けれど奥さんも浮気してるしな」
「その子にですよね」
 三野は三浦のスマホの猫を見て言う、見れば動画でおもちゃに前足を出して必死の顔でじゃれついている。
「そうですよね」
「奥さんはこいつ彼氏って言うんだよ」
「性別考えたら妥当ですね」
「それで俺はな」
「彼女なんですね」
「絶賛浮気中だな」
「ダブル不倫でしかも相手は同じなんですね」
 三野はやれやれといった顔で言った。
「もう何が何だか」
「わからないか」
「不思議な三角関係ですね」
「こいつソファーの足で爪とぐからな」 
 三浦は聞かれてもいないことを話した。
「それで足がボロボロでな」
「壊れそうですか」
「そうなってるんだよ」
「何気にまずいですね」
「ああ、けれど可愛くてな」
 完全にのろけた顔での言葉だった。
「それでな」
「それもいいんですね」
「ご飯駆ってお水もやってトイレのこともしてな」
「大変ですよね」
「けれど可愛くてな」
 またこう言うのだった。
「それでな」
「そうしたこともいいですか」
「病院にも連れて行ってるけれどな」 
 お金だけでなく手間もかかるというのだ。
「定期的にな」
「猫も生きものだから身体診てもらわないと」
「だからな」
「それで、ですね」
「ちゃんとしてるさ、そこまでしてもな」
 それでもとだ、三浦はにこにこしながら三野に話した。
「気ままでご飯寄越せとか遊べって時は催促してきて」
「食べさせなかったりするとですね」
「噛んだり引っ掻いてきてな」
「狂暴ですね」
「それで飯出しても遊んでやってもな」 
 それでもというのだ。
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