◇閑話・参◇ 〜酒豪達の宴〜
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わせられる程は強くないのでな」
「あら。ですがこのお酒、土方様の発案とか?」
「確かに製法は私が伝えた。だが、製法を存じている者が、酒豪とは限らぬぞ」
主は、そう仰せになると水を飲む。
合いの水と呼ぶらしいが、試してみると納得がいく。
酒を飲み続けると酔いも回りやすく、長い間楽しむのが難しいが、これならば適度に中和される。
……尤も一度、主が潰れるところを見てみたいものだが。
引き際を心得ておられる御方、容易ではない。
「意外ですわね。もし宜しければ、どのようなお酒なのか教えていただけますか?」
「良かろう」
主は拘りなく、原料や製法を口にする。
黄忠殿のみならず、皆がそれに聞き入っている。
……無論、私もだが。
「随分と、贅沢なお酒ですのね」
「米が原料とは聞いていたが、まさか玄米ではなく、それを白米にするとはの」
「そりゃ、米の美味い部分だけを厳選してるんだ。不味い訳がねぇわな」
手にした盃の中の、澄み切った液体。
漂う上質な果実の如き香りと、舌で転がした時のすっきり感。
喉越しも良く、後味も米独特の甘味がほのかに残る感じがする。
……とにかく、美味い。
「母様、歳三、お待たせ」
孫策殿が、息を切らせながら到着した。
「やっと来たか、雪蓮。遅ぇぞ?」
「ゴメンゴメン。あら?」
頭を下げる黄忠殿に気づかれたらしい。
「初めまして。荊州の住人、黄忠と申します」
「あ、えっと……」
戸惑ったような孫策殿に、主が助け舟を出した。
「故あって、私と知己を得た御仁だ。心配要らぬ」
「そ。わたしは孫策、宜しくね」
「やはりそうでしたか。こちらにおわす孫堅様によく似ておいでですから」
「ま、話は後だ。さっさと座れ、雪蓮」
「はいはい」
つくづく、仲の良い母娘だと思わされる。
……私も、いずれはあのように子を為す日が来るのであろうか?
その相手?
無論、主以外にはあり得ぬ。
半刻程が過ぎたであろうか。
いくら盃を重ねても、主の酒は本当に美味だ。
「ささ、孫策様。もう一献」
「ええ。にしても黄忠、あなた強いわね」
「堅殿や策殿と呑んで潰れぬとは、かなりのものじゃからの。儂も嬉しい限りじゃ」
「趙雲、メンマ貰うぜ?」
「はっ、ご随意に」
皆は変わらぬ調子で杯を重ねていく。
「……皆。済まぬが私は中座するが、構わず続けてくれ」
主が席を立つ。
「何だ歳三。相変わらず弱ぇな?」
「お前達と合わせられる方が、余程尋常ではないが? では、失礼する」
……やはり、主はどんな仕草も絵になる。
立ち居振舞い全てが、誰にも真似出来ぬものがある。
「そうだ、趙雲。一度聞きたかったんだが」
と、孫堅殿が杯を傾けながら話しかけてきた。
「
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