◆外伝・壱◆ 〜華琳の憂鬱〜
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が策を立てていました。……ですが、それに気付いたのか、土方が南皮に乗り込んできたのです。そして、汚らわしい眼で私を見たんです」
「…………」
「男に見られるだけでも、妊娠してしまいます。ですから、話すつもりは一切ありませんでした」
見られるだけで妊娠って、自然の摂理を無視し過ぎよ。
それに、あの歳三がそんな眼で見る訳がないわ。
……被害妄想と言うか、そこまで男を無条件で嫌悪するのも、ちょっとね。
「それなのに、袁紹さまは私を庇うどころか、あの男の味方をなさいました。それで、見限って南皮を飛び出したんです」
「それで、そのままこの陳留に?」
「……いえ」
何故か、桂花はガタガタと震えだした。
「どうかしたの?」
「……は、はい。思い出すのもおぞましいのですが……」
「言いなさい」
「その道中、盗賊のような集団に襲われまして。見るもおぞましい男共に縛り上げられて、冀州の外に放り出されたんです」
「……襲ったのに、貴女には何も手出ししなかったの?」
「されました! 汚らわしい眼で視姦されて、汚い手で縛られて!……思い出すだけでも、吐き気がします」
……それ、本当に盗賊だったのかしら?
「それもこれも、みんなあの土方のせいなんです! だから、見返して、復讐してやるんです」
「……なるほど、呟きの意味はわかったけど。でも桂花、その復讐のために私を利用するつもり?」
「利用ではありません。華琳様に覇道を歩んでいただければ、自然とあのような男、屈服させられるかと。その為ならこの桂花、智の限りを尽くします」
……頭痛がしてきたわ。
聞いたのは私だけど、今はそれをとても後悔している。
「もういいわ、桂花。下がりなさい」
「……え? 華琳様?」
桂花は、驚いて目を見開いた。
「下がりなさい、と言ったのよ。聞こえなかったの?」
「あ、あの……。何か、私に不都合が?」
「……その胸に手を当てて、よく考えなさい。とにかく、今すぐ下がりなさい。いいわね?」
冷たく言い放つと、桂花はがっくりと項垂れた。
桂花が出て行った後、私は臥所に身を横たえた。
……全く、男嫌いが過ぎて、歳三ほどの人物を見誤るとはね。
軍師としての才はあるのかも知れないけれど、視野が狭過ぎるかも知れない。
その点、郭嘉や程立は……ハァ。
不思議と、あの二人は私の許にいるべき、そんな気がするのよね。
……歳三との絆を見れば、あり得ない筈なのに。
一度真名を許した以上、桂花は今後も私の為に働いて貰うしかないけど。
……隣の芝生は青い、か。
本当、どうにかして歳三を私に跪かせるしかないわね。
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