◆外伝・壱◆ 〜華琳の憂鬱〜
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「そう。確認をしたいの、すぐに帳簿を持ってくるように伝えなさい」
「はっ」
秋蘭は駆けていく。
……いくら何でも、あの娘にいろいろと任せ過ぎよね。
郭嘉や程立みたいな娘が、私のところにもいてくれると助かるのだけれど。
「華琳様。この者です」
戻ってきた秋蘭は、一人の少女を連れていた。
変わった形の頭巾を被り、まだどこかあどけなさを感じさせる娘ね。
「貴女が、糧秣の担当者ね?」
「はっ!」
「帳簿を見せなさい。確かめさせて貰うわ」
「どうぞ」
頭巾の娘が差し出した帳簿に、ざっと目を通す。
……何よ、これは。
「……貴女、どういうつもりなのかしら? 指示した量の半分しか整っていないようだけど?」
「御意です」
「存念を聞かせなさい。……返答次第では、この場で斬るわよ?」
私は、本気だった。
期限を切った上で出した指示、理由の如何を問わず、遅れは認められないわ。
……でも、娘は落ち着き払っているようね。
「理由はございます。まず、曹操さまは慎重な御方、ご自身で必ず帳簿を確かめる筈ですから、不足はあり得ないかと」
「……貴女、私を馬鹿にしているのかしら?」
思わず、私は絶を握り締めた。
「華琳様!」
「……わかっているわ、秋蘭。一応、最後まで聞いてあげるわ」
「はい。次に、その量であれば、揃える時間が短縮できる事、また行軍速度も上がります」
「そうね。でも、討伐にかかる時間までは短縮できないわよ?」
「第三に、私の策を用いていただければ、より短期間で勝利を得る事が出来ます。これが、その量の理由です」
ふ〜ん、なかなかいい眼をするじゃない。
この私相手に、此処まで言い切るとは大した自信ね。
「貴女、軍師志望なのかしら?」
「はい! この荀ケめを、どうか華琳様の軍師として、麾下にお加え下さい!」
荀ケ……その名、聞いた事があるわ。
あの跋扈将軍にも屈せず、清廉を貫いた荀家の一族に、才豊かな者が居る、と。
その一人が、この娘、という事ね。
「荀ケ。貴女、私を試すという事が、どういう事かわかっているわね?」
「はっ。お気に召さなければ、この首、どうぞ刎ねて下さいませ」
「そう……。ならば、この戦で貴女が如何に私の為になれるか。それを証明して見せなさい」
「は、はい! ありがとうございます!」
ふふ、こういう娘も、悪くないわね。
……万が一、裏目に出た時は、私の最も恐れる事態になるかも知れないけど。
でも、得難い人材が手に入るのなら、そういう賭けも必要ですもの。
結局、戦いは荀ケの策通りに終わった。
……というよりも、合図の銅鑼を出撃と勘違いしたらしくて、勝手に賊の方から山塞を飛び出してきた。
そこを、春蘭と秋蘭が挟み撃ちにして、一網打尽
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