◆外伝・壱◆ 〜華琳の憂鬱〜
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あの……。もしかして、勝てたとしても、ボク達の被害も小さくはないから……ですか?」
「あら、季衣。少しはわかっているようね」
「エヘヘ」
ふふ、素直な子ね。
「……春蘭、まだわからないという顔をしているわね?」
「は、はぁ……。申し訳ありません」
「ふぅ。時間の無駄だから、もういいわ。秋蘭、二人に説明してあげなさい」
「はっ。姉者、季衣、良いか? まず、季衣が気付いたようだが、賊軍と言えども、同数の兵でぶつかれば、こちらの被害も少なくはないだろう。姉者もわかると思うが、精兵は一朝一夕には作れないものだ」
「それは……そうだな」
「失った兵は補充するしかないが、精兵に鍛え上げるまでに、また同じだけの時間がかかる。時間がかかるという事は、その分の費えも必要になり、それまでの間、我が軍は戦力が少なくなってしまう。そうであろう、季衣?」
「は、はい」
「それだけではない。相手は数が多いとはいえ、賊だ。そのような相手に、仮に千の兵を失ったとする。……世間は、それを何と見ると思う?」
「勝ちは勝ちであろう?」
「……姉者」
「……底なしの莫迦」
秋蘭だけでなく、紫雲まで頭を振っているわ。
「な、何だと? 誰が全身脳筋の莫迦だと!」
「誰もそこまで言ってないでしょう、春蘭? 流琉、貴女が答えなさい」
「あ、はい。……宜しいのでしょうか?」
チラ、と春蘭を見て躊躇う流琉を、私は眼で促す。
「ええと、盗賊相手に少なくない被害を出せば……。少なくとも、華琳様の評判が落ちる事になりますね」
「流琉! 貴様、何と言う事を」
「春蘭、黙りなさい!」
「うう、華琳さまぁ……」
全く、この娘は……困ったものね。
「流琉、続けなさい」
「はい。評判が落ちるという事は、華琳様がお望みの人を集める事にも差し障りが出る……そうですよね?」
「ええ。見事よ、流琉」
そう、私が最も恐れているのは、世間の評判を落とす事。
いくら実力を備えていても、評判が一度落ちてしまうと、それを挽回するのは至難の業。
こんな些事でも、決して手を抜けない。
ましてや、私は覇道を歩むと決めた者ですもの。
「でも、華琳様。だからと言って、盗賊を放っておく訳にはいきませんよね?」
「勿論よ、季衣。討伐のため、出陣するわ。春蘭、秋蘭、季衣はすぐに準備にかかりなさい。紫雲と流琉は留守をお願いね」
「御意!」
そう、こんな馬鹿馬鹿しい戦いで、一兵たりとも失う訳にはいかないわ。
だから、私自ら、討伐してあげるわ。
……ふふ、歳三ならこんな苦労もしないのかもね。
鍛え上げた精兵、勢揃いには時間を要しなかった。
……ただ、糧秣の確認がまだね。
「秋蘭。糧秣の担当は誰?」
「は。先日、仕官してきた者に任せているのですが……」
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