◇閑話・弐◇ 〜休暇大作戦〜
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
比べ、確実に落ち着きを取り戻しているかと。少なくとも、飢えで苦しむ者は、明らかに減っています」
「黄巾党から押収した糧秣を分け与えたのが、確実に効いているようですね」
「うむ。だが、それはあくまでも一時凌ぎに過ぎぬ。地道に立て直していかねばならぬな」
私達は、大きく頷く。
歳三殿は、ご自身はあまり表に出ようとなさらぬが、優れた為政家だと改めて実感している。
母国では王や貴族などではなかったとの事だが、麾下や兵、庶人に対する慈愛を常に持っておられる御方。
それでいて、理想よりも現実を優先させ、その為にどうすべきか、日々考えておいでだ。
ご自身で何事も進めようとはせず、極力他者を立てようとする。
……もし、この御方が皇帝陛下であったなら、この大陸はここまで乱れただろうか?
そんな他愛もない妄想を持ってしまう事すらある。
個人的には、情報を重んじるという姿勢に、心からの共感を覚えている。
十分な情報収集に裏打ちされた行動に、的確な判断が加わるのだ。
私が歳三殿と共に行動するようになって以来、情報不足故の誤りを招いた事はただの一度もない。
そして何より、私達のする事を全面的に信頼し、功は公正に賞する一方で、過ちは理を説いて諭すだけに留める。
結果的にしくじりを犯しても、それを咎め立てる事もない。
その代わり、道義に悖る事、信頼を裏切る行為に対しては、容赦なく罰せられる。
……だからこそ、お仕えし甲斐がある主でもあるのだが。
「もし」
村人の一人が、歳三殿に寄ってきた。
「何か?」
「へえ。これ、良かったら召し上がってくだせぇ」
と、大ぶりの柿を三つ、差し出してきた。
「良いのか?」
「太守様のお陰で、おら達は救われただ。これは、せめてものお礼でさぁ」
「ふむ。では、戴こうか」
何の拘りも見せず、歳三殿は手を伸ばす。
そのまま、皮ごとかぶりつかれた。
「ふむ、これは美味い。お前達もどうだ?」
「は、はい」
私と稟は、呆気に取られてしまう。
「程良い甘さの柿だな。礼を申すぞ」
「へ、へい」
緊張気味だった村人も、ホッとしたように笑顔を見せた。
その村を出た後で、歳三殿に毒を盛られる可能性を糺すと、
「庶人に毒を盛られるようでは、太守としては務まるまい。それに、あの者の眼は、邪な企みを秘めてはいなかったからな」
と、事もなげにおっしゃった。
軽率に過ぎると思う向きもありそうだが、それ以上に私は歳三殿の器量の大きさに感服するばかりだった。
それは稟も同じだったようで、歳三殿を見る眼が、暫し敬慕に満ちているように見えた。
◇視点:風◇
峠で、山賊さんが十数名、風達の行く手を遮りました。
でも、愛紗ちゃんと星ちゃんに敵う筈もなく、首
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ