◇閑話・弐◇ 〜休暇大作戦〜
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なので、余程の緊急時を除いて、全力疾走はさせられない。
……尤も、今回は急いではいけないので、その必要もないのだけど。
「歳三殿は、薬草にも造詣が深いと聞いています。ならば、温泉にもお詳しいかと思いまして」
「疾風、それは買い被り過ぎだ。多少は存じているが、な」
歳三様の事だ、そうは仰っても、常人にはない知識をお持ちなのだろう。
「稟。この地では、他に温泉が湧出する場所はあるのか?」
私は、大陸の地図を頭に浮かべて、少し考えた。
「あります。数は多くありませんが」
「そうか。私の国は、全国至るところにあった。将軍家、いや王が入るために、湯を運ばせた温泉もあった」
「湯を? 費えがかかりそうですし、そもそも冷めてしまうのでは?」
「そうだ。王は城を出られぬ、という理由もあったが」
それを差し引いても、贅沢だし、無駄使いには違いない。
「だが、本当に私がギョウを留守にして良いのか?」
「問題ありません。それは、愛里や彩達が請け負った通りです」
「うむ。あの者らを信用せぬ訳ではないのだが」
「それに、歳三殿は魏郡に来てより、黒山賊の一件以外、郡内を見ておられませぬ。良い折りかと存じます」
「疾風の言う通りです。それよりも、黎陽県まで恙ない道中である事を祈りましょう」
「……わかった」
歳三様の返事に、私は疾風と頷き合った。
◇視点:星◇
主達が出立するのを、城門にて見送った。
「さて、愛紗よ。準備は良いか?」
「ああ。風はどうだ?」
「いつでも大丈夫ですよー」
「うむ。では、参るぞ」
頷き合い、私は振り向いた。
「すまんな。後を頼むぞ?」
「ああ、任せておけ」
「はい。お気を付けて」
彩と愛里が、見送りに来てくれていた。
元皓と嵐は、城内で書簡と格闘中だが、既に話は済ませてある。
私と愛紗は、素早く馬上の人となった。
風は、私達と比べて馬術は見劣りするので、私の前に跨がらせた。
「少々険しい道だが、主らに先行する道を取る。行くぞ」
「応っ!」
「了解ですよー」
将が単独行動を取るなど、主に知られたら叱られるやも知れん。
だが、兵を動かせばその分行動も制約を受けるし、糧秣も必要となる。
それに、我らはもともと、旅慣れている。
ふふ、そう考えると、随分と久々ではあるな。
「星ちゃん? どうかしましたか?」
「いや、何でもない」
今のところ、郡内は平穏そのものだ。
良からぬ事を企む者が残っている可能性はあるが……私と愛紗が揃っているのだ、後れは取るまい。
◇視点:疾風◇
途中の村に立ち寄り、人々の暮らし向きを確かめつつ、道中は続く。
「疾風。庶人の様子は、以前と比べてどうか?」
「私が見る限り、歳三殿が赴任された当初と
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