◇閑話・壱◇ 〜晋陽での一日〜
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「さて、始めるとするか」
一定の間を置き、閃嘩と対峙する。
「ご主人様。此処にて、見聞させていただいても宜しいですか?」
「ウチもええか?」
愛紗と霞に軽く頷き、私は視線を閃嘩に戻した。
構えに、以前には見られなかった、余裕が感じられる。
……ふむ、手強いぞ。
「いざ!」
「よし、行くぞ!」
斧は、その重量を活かし、鎧を着た相手にも有効打を与えられる武器。
そして、閃嘩が持つのは、所謂大斧と呼ばれる、両手で持つ形状のものだ。
以前の閃嘩ならば、ただ振り回すばかりであったが……さて。
「でりゃぁぁぁぁぁっ!」
突き崩しに来たか。
あれにまともに合わせれば、剣を巻き取られかねない。
試みに、左に飛んでみた。
「甘い!」
閃嘩は、柄を抱え込むようにして持つと、斧頭を蹴り上げた。
巨大な刃が、私に迫る。
受ける事はせず、あくまでも回避に徹した。
いくら丈夫な枇杷とは言え、あの重量をまともに受けるのは賢明ではない。
「えい、えい、えいっ!」
間髪を入れず、薙ぎの応酬。
刃が迫った時のみ、軽く木太刀で受け流す。
「どうした! この程度か!」
「なに。閃嘩の勢いに、舌を巻いておるだけよ」
「フン、戯れ言を!」
斜めに振り下ろされる斧を、ひたすら躱す。
その都度、結構な量の土が掘り起こされ、宙を舞う。
「閃嘩。攻撃がだいぶ変則的になってきたな。進歩の跡が見えるぞ」
「余裕か、歳三!」
言うほど、余裕はないのだがな。
……だが、そろそろ良いだろう。
「ハァッ!」
閃嘩の一撃を躱し、すかさず木太刀を突き出す。
……総司なら、三段突きを遣うのだが、私には無理な相談だ。
その代わり、このまま突きを繰り返す。
「どうした、その程度の突きでは、私に当たらんぞ!」
「ほう。大した自信だ……だが、突きは当たらずとも良いのだ」
「何?……うわっ!」
不意に、閃嘩が蹌踉めく。
そして。
「勝負あったようだな」
その喉元に突きつけられる、私の木太刀。
「……私の、負けだ」
模擬斧を手放す閃嘩。
「……何と言うか、ご主人様らしい勝負でしたな」
「しっかし、閃嘩の攻撃を利用するやなんて。戦場で、敵にしたないなぁ」
呆れたような、愛紗と霞の声。
「何とでも言うがよい。これが、私の戦法だ」
閃嘩は、大斧での攻撃ゆえ、弾みで土を掘り起こしてしまう事がある。
それを繰り返せば、足場は悪くなるのは必然。
そして、機を見て、その場所に追い込めば体勢を崩す……それだけの事。
「だが、よくぞ此処まで、己を鍛え直したな。今の閃嘩ならば、月を託すに申し分ない」
「本当か?」
「ああ。だが、精進は怠るな?」
「わかった。感謝する、歳三」
負けたと
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