◇閑話・壱◇ 〜晋陽での一日〜
[4/6]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
きですからねー?」
「心配要らぬ。私が、そのような男と思うか?」
「さてさて、それはどうでしょうねー」
そう言う風の顔は、笑っていた。
……とは言え、ここも無理、と。
ううむ、思いの外、場所がないな。
思い切って、城の外に出てみた。
手頃な空き地は、すぐに見つかったのだが……。
「わーい、わーい」
「待ってよー」
完全に、子供の溜まり場と化している。
まさか、この状態で真剣など使える筈もない。
「お兄ちゃん!」
しかも、鈴々が混じっているとは。
「鈴々。街の子らと、戯れているのか?」
「にゃ? 良くわからないけど、今日は午前中、調練が休みになったのだ。だから、こいつらと遊ぶ事になったのだ」
私の問いと変わらぬのだが、まぁ良い。
しかし、こうして見ると、鈴々は年相応の子供だな。
本人は嫌がりそうだが、背伸びしたとて、鈴々は遊びたい盛りであろう。
「ねーねー、鈴々お姉ちゃん。このおじさん、誰?」
「おじさんじゃないのだ。お兄ちゃんは、鈴々のお兄ちゃんなのだ。あと、月のお父さんなのだ!」
「じゃ、董卓さまのお父さんなんだ。へー」
「董卓さまのお父さんなら、きっと優しいんだね」
あっという間に、私まで子供に囲まれてしまう。
「遊んで遊んでー」
「鈴々お姉ちゃんからも頼んでよ?」
「うにゃー。お兄ちゃん、どうするのだ?」
うむ、子供と戯れるのも悪くはない。
……が、今は閃嘩との先約がある。
「済まぬが、私は行かねばならぬ。鈴々、後は任せたぞ」
「えーっ? つまんないよー」
「そうだよー。僕たちと遊ぼうよー」
口々に不満を言う子供達を、一人ずつ撫でてやる。
「またの機会にな。今日は、鈴々が、思い切り遊んでくれるそうだぞ」
「いいのか、お兄ちゃん? 午後は、調練があるのだ……」
そんな鈴々も、一緒に撫でてやる。
「たまには良かろう。愛紗には、私から伝えておく」
「ありがとうなのだ! よし、ついて来いなのだ!」
子供達を引き連れ、鈴々は駆け出していく。
……うむむ、時ばかりが過ぎ去っていく。
仕方がない、城内へ戻るとするか。
「早いな、歳三」
「……うむ」
結局、仕合の場である中庭で、少しだけ、兼定を振るう事が出来た。
最初から、ここにすれば良かったのやも知れぬが。
閃嘩は、模擬戦用の斧を手にしていた。
「歳三、得物はどうする?」
「私は、これを使わせて貰う」
枇杷で作った、木太刀。
木太刀は樫が多いが、打ち合って折れやすいのが難点。
その点、枇杷は重いが、その分丈夫で、私の好むところだ。
「木剣だと?」
「そうだ。だが、木だからと侮れば、痛い目に遭うぞ?」
「わかった。だが、私とて、手加減はしないぞ?」
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ